瀬戸内海における陸からの栄養塩負荷削減(1973 年)実施以降の栄養塩濃度変化とその水産業への影響

  • 多田 邦尚
    香川大学農学部応用生物科学科 香川⼤学瀬戸内圏研究センター庵治 マリンステーション
  • 中國 正寿
    香川大学農学部応用生物科学科
  • 山口 一岩
    香川大学農学部応用生物科学科
  • 一見 和彦
    香川大学農学部応用生物科学科 香川⼤学瀬戸内圏研究センター庵治 マリンステーション

書誌事項

タイトル別名
  • Changes in nutrients and their effects on fisheries after the introduction of land-based nutrient loading regulations in the Seto Inland Sea since 1973: A review

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抄録

瀬戸内海の栄養塩濃度減少と水産業への影響について議論した。瀬戸内海は1960 年代にはじまった高度経済成長期に,著しく富栄養化が進行した。当時は,赤潮が多発し,魚類養殖にも大きな被害が及んだ。近年,水質が劇的に改善した。陸からの全窒素・全リン(TN,TP)負荷量はそれぞれ40%,60% 削減され,海水中の栄養塩濃度は明らかに低下した一方で,TN,TP 濃度には顕著な低下がみられない。栄養塩濃度減少は単純に陸上からの負荷削減だけがその要因ではなく,海底堆積物からの栄養塩溶出も重要であると考えられた。しかしながら,水質の改善にも関わらず,漁獲量は徐々に減少してきた。植物プランクトンの基礎生産量はこの栄養塩濃度減少に応答しておらず,また,動物プランクトン量の変動については,それを解析できるデータがない。漁獲量減少の原因については不明である。栄養塩濃度減少は,その原因のひとつであると考えられるが,埋め立て,藻場・干潟の減少,地球の温暖化,漁獲圧もすべて漁獲量減少の原因として考えるべきである。

収録刊行物

  • La mer

    La mer 61 (3-4), 175-187, 2024-03-27

    日仏海洋学会

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