本土へ通学する離島在住高校生が抱く負担感の解明

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  • Clarification of the burden that high school students living on remote islands have when commuting to high schools on the mainland

抄録

<p>1. 研究の背景</p><p> 2015年から2020年にかけての離島地域の人口減少率は6.95%であり, 同期間の全国の人口減少率 0.746%よりも, はるかに多い. 離島地域では, 高校への進学を契機に下宿を始める子どもや, 世帯ごと島外へ移住する事例が多いことを踏まえると, 離島地域における人口減少率を抑えるためには, 高校生が離島から通学できる環境が必要だと考えられる.</p><p></p><p>2. 研究の目的</p><p> 本土の高校へ通学する生徒数が全国で最も多い三重県鳥羽市の答志島, 2位である愛知県南知多町の日間賀島, 3位の同じく篠島に, 三重県鳥羽市の菅島, 神島を加えた5島を対象として, 離島から船で通学する高校生が抱く負担感の要因を分析する.</p><p></p><p>3. 研究の方法</p><p> 5島在住の高校生 42名(以下「離島生」), および本土在住の鳥羽高校生 131名(以下「本土生」)を対象に, アンケート調査を行った. 主に, 提示した項目に対する不安度や満足度, および通学時の移動手段や乗り換え地点, 所要時間などを質問した. 続いて, 本土生と離島生で, 通学時の不安度, 通学時の満足度, 実際の通学条件を比較した.</p><p></p><p>4. 通学時の不安度の比較</p><p> アンケート調査では, 「交通手段が運休すること」,「交通手段が遅延すること」,「交通手段が混雑すること」,「交通手段で寝過ごすこと」,「乗り物酔いをすること」,「利用する便を間違えること」,「利用予定の便を逃すこと」,「最終便を逃すこと」,「乗車・乗船中にお手洗いに行きたくなること」,「通学中に怪我をすること」の10項目に対する不安度を, 5段階で尋ねた.</p><p> 対応のない2群間に統計学的な有意差があるかを検証できるマン・ホイットニーのU検定を行った結果, 離島生は本土生よりも「通学中に怪我をすること」,「最終便を逃すこと」を不安視していたことがわかった. 前者について, 不安度の平均値は全10項目のうち3番目に低かったため, 大きな問題ではないと思われた. 後者について, 他の項目 -利用する交通手段全体を対象とした- と異なり, この項目では対象を最終便に限定していたため, 離島生にとっては船が, 本土生にとっては電車やバスが該当し, 不安度に差が出たと考えられた. すなわち, 離島生の通学を大きく特徴づけるのは船の利用だと思われた. 次章では, 利用する交通手段別の満足度についても見ていく.</p><p></p><p>5. 通学時の満足度の比較</p><p>5.1 交通手段別の満足度の比較</p><p> 交通手段別に, 「過ごしやすさ」,「本数の多さ」,「運休率の低さ」,「遅延率の低さ」に対する満足度を5段階で尋ねた. マン・ホイットニーのU検定を行った結果, 船の「過ごしやすさ」,「遅延率の低さ」に対する満足度は, 電車の場合, およびバスの場合よりも高いことがわかった.</p><p></p><p>5.2 通学条件に対する満足度の比較</p><p> 「自宅から最寄り駅・バス停・港(以下『最寄り駅等』)までの近さ」,「高校から高校の最寄り駅等までの近さ」,「片道乗り換え回数」,「片道待ち時間」,「片道通学時間」,「片道通学費用」に対する満足度を5段階で尋ねた. マン・ホイットニーのU検定を行った結果, 離島生は本土生よりも「自宅から最寄り駅等までの近さ」に満足しており, 「通学費用の高さ」に満足していないことがわかった.</p><p></p><p>6. 通学条件の比較</p><p> 前章で取り上げた6項目について, アンケート調査の結果から実際の数値を算出し, 被験者の客観的満足度の比較を試みた. マン・ホイットニーのU検定を行った結果, 離島生は本土生よりも自宅から最寄り駅等までが近く, 乗り換え回数, 通学費用が大きく, 待ち時間, 通学時間が長いことがわかった.</p><p> 同じ6項目に対する主観的満足度(5.2節)と客観的満足度(6章)とでは, 異なる結果になることがわかった.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390018384729460096
  • DOI
    10.14866/ajg.2024s.0_124
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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