都市化による切盛造成と付随する建設発生土流動の環境影響評価

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  • Mapping Uncounted Anthropogenic Fill Flows: Environmental Impact and Mitigation

抄録

<p>はじめに</p><p>2021年7月3日に発生した熱海市の盛土土石流により、建設発生土の適正処理が改めて防災・減災上の課題として表出した。切土盛土造成による人工地形に関する環境問題は、とりわけ高度経済成長期以降、私達の生活圏に常在し、1980年代前半には地理学会においても人工地形研究グループが活動していた。しかし、人工地形を、付随する建設発生土の流動も含め、定量的にその環境影響評価を行った事例はない。当時はGISやデジタル空間情報が未整備であり、また開発優先主義の世相の中、人工地形は中心課題として深く考究されることはなかった。著者らは、2000年代初頭から国内外の現場で人工地形環境を研究してきている。本報告では近畿圏を対象として進めている最近の研究事例の一端(Hara et al. 2022)を紹介する。</p><p></p><p>研究方法</p><p>大阪府土砂条例と一部臨海埋立地の土砂原票(発生地、受入地、期間、体積)を、CSISアドレスマッチングサービスおよびPythonを援用しながら、ポイントおよびラインデータとしてデジタル化を完遂した。その後、現状土砂流動と、全体最小移動距離で最適化した土砂フローを視覚化した。また、土砂の掘削と移動にともなうCO2を、各原単位と土砂重量(体積より換算)・距離を乗じることで算定した。これらの結果を、地域の河川の自然侵食量と、大阪府部門別CO2発生量と比較、純粋な(人新世的)地学的視点および人間の産業活動の両面からスケーリング議論を行った。</p><p></p><p>結果と考察</p><p>大阪府の年平均土砂流動積算距離は7668kmであり、その8割は臨海埋立地に、残り2割が内陸埋立地に起因していた。年平均流動積算重量は1,059,019tonであり、臨海・内陸でほぼ半々だった。単位面積当たりの土砂流動値としては、311.2m3/km2/yearが得られ、これは当地の自然河川侵食量22m3/km2/yearより大きい。年平均CO2積算排出量は10,964tonであり、その58%が掘削由来、残り42%が運搬由来だった。全体距離の最小化シミュレーションでは、8448kmの移動距離と、5724tonのCO2削減量が達成可能であると推定された。これは2160世帯分の発生量と等価である。</p><p></p><p>【引用文献】</p><p>Hara, Y., Hirai, C. and Sampei, Y. 2022. Mapping Uncounted Anthropogenic Fill Flows: Environmental Impact and Mitigation. Land 11: 1959.</p><p>https://doi.org/10.3390/land11111959</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390018384729554560
  • DOI
    10.14866/ajg.2024s.0_208
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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