MaaSアプリに対する利用者の評価

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書誌事項

タイトル別名
  • User's Evaluation of MaaS Apps
  • Word-of-Mouth Analysis of Smartphone Apps
  • スマートフォンアプリへの口コミを資料とした分析

抄録

<p>1.研究の背景・目的</p><p> 国土交通省と経済産業省が2019年に「スマートモビリティチャレンジ」を開始して以降,日本全国でMaaSの取り組みが展開されている.MaaSは公共交通の再編や交通弱者対策のみならず,多様な移動手段の連携や各種サービスの提供による人々の移動の質の向上を目指すものであり,地理学としても取り組むべき課題であるといえよう.報告者はこれまで,「スマートモビリティチャレンジ」の採択事例について,観光との連携状況及び提供移動手段・サービスの把握(澁谷ほか,2022)や,採択自治体における取組状況と課題認識の調査(澁谷ほか,2023)を行い,MaaS提供者側の現状と課題を明らかにしてきた.一方で,MaaSの推進にはサービスに対する利用者の評価を把握することも重要となる.とりわけ,利用者に提供されるMaaSアプリは,交通手段の利便性や移動の体験などに直接かかわるものである.そこで,本研究はMaaSアプリに対する利用者の口コミを資料とした分析を通して,MaaSに対する利用者の評価内容を解明する.</p><p>2.分析対象</p><p> 本研究はMaaSアプリ対する利用者の口コミ投稿を分析対象とする.対象アプリの選定手続きは以下の通りである.まず,国土交通省と経済産業省が取り組みを進める「スマートモビリティチャレンジ」の採択事業において使用されたMaaSアプリを抽出し,ウェブアプリ,スマートフォンアプリに分類する.そのなかで,アプリストア経由で口コミを収集可能であることからスマートフォンアプリに絞り,アプリで提供されるサービス及び機能,移動手段の整理を行う.整理した結果と口コミ投稿数に基づき,機能と提供移動手段が類似し,かつ一定以上の投稿数のあるEMot,my route,tabiwa by WESTERを本研究の対象とする.</p><p> 選定した3つのアプリに対する投稿を2023年7月13日,14日に収集し,誤字脱字の修正や表記ゆれの統一など,データクレンジングを行うとともに,英語のみの投稿を除外する.その結果,540件の投稿が対象となり,そのうち星1,2を付ける365投稿を「低評価」,星3を付ける57投稿を「中評価」,星4,5を付ける118投稿を「高評価」に分類する.それぞれに対して,KH Coder及びRを用いた分析を行い,評価別の投稿内容の差異を明らかにする.</p><p>3. 利用者のMaaSアプリ評価</p><p> 共起ネットワークによって,各評価の投稿テーマを抽出すると,低評価では,「チケットの購入・使用」や「ルート検索」,「ユーザー登録・認証」,「フリーパス」に関するテーマが見いだされる.中評価でも同様の傾向を示す.高評価においても,「ルート検索」と「チケットの購入・使用」に関するテーマを見出すことが可能である一方で,地元店舗や観光スポット等に関する「情報提供」は高評価でのみ抽出される.MaaSでは異業種との連携が目指されており,連携により実装される機能に対する点が高評価で言及されやすい.一方で,「ユーザー登録・認証」は低評価,中評価のみにあらわれており,不満が抱かれている点である.MaaSアプリで提供される交通チケットを購入するためには,ユーザー登録は必須であるが,その手続きというサービス利用前の段階での不便さが特に低評価につながっていることが推測される.</p><p> また,テーマを構成する語群の違いと,語と語のつながりから,評価対象ごとの文脈の特徴を見いだすことが可能である.例を示すと「ルート検索」に対しては,高評価投稿では多様な移動手段を組み合わせた検索に対する言及がある一方で,低評価投稿では検索結果そのものに対して言及がされる.このように評価によって言及されるテーマが異なる場合もあれば,同様のものもあり,後者の場合にはそれぞれの評価ごとにテーマに対する評価項目が異なる.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390018384729556608
  • DOI
    10.14866/ajg.2024s.0_211
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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