日本における公営プラネタリウム施設の上映プログラムからみた実態

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  • Facility situation visible as seen from the projection programs of public planetarium facilities in japan.

抄録

<p>1.はじめに</p><p> 日本は,アメリカ合衆国,中国に次いでプラネタリウム施設を多数有し,かつ光学機メーカーを3社有する世界的に特異な国である.現在,日本では300館近くが稼働し,うち9割が地方自治体の所有する文化公共施設に設置される.開設の推移は,1960年代から増加し,1970年代前半と1990年代前半をピークに,2000年代以降も年数館の新設がある(日本プラネタリウム協議会,2020).プラネタリウムは,小中学校の理科学習の補填教具としての役割を主に,第二次ベビーブームの人口増加に合わせて,全国に設置された.設置年代と立地の傾向は,1970~80年代は都市公園内および住宅地内に,1980~90年代は公共施設に隣接,2010年代は駅前が比較的多い(井内,2019).施設は,機器更新,施設設備修繕を施しながら運営されるが,近年は機器老朽化を理由に休止・閉館する施設も少なくない.数多く設置された70~90年代の施設は,開設から30~50年近く経っており,地方自治体の有する公営施設では,今後一層,現在の地域に合った公共サービスの見直しや施設存続の意義が問われると考えられる.既存の文化・教育施設の利活用の実態としては,廃校跡地や廃校の利活用による利用者の交流など公立学校を対象とした事例研究がある(酒井2001;村井2021;畠山2016).人口減少,少子高齢化が加速するなか,2000年以降,各地方地自体で地域再生を目的として教育や文化を基盤にした地域づくりが取り組まれてきた.公営プラネタリウムは,地域コミュニティの再生や交流の拠点となりうる文化・教育に関連する公共施設内に設置される.プラネタリウムで提供される公共サービスの実態を明らかにすることは,地域に対する利活用の可能性を探る一歩となる.プラネタリウムの主なサービスが上映プログラムである.「番組」と呼ばれ,上映は1回30分~60分程である.番組は,当日の星空を再現し解説員が案内する番組を主に,対象者を明確にした番組や,番組配給会社が販売するコンテンツ番組,館独自で企画制作される番組など多種存在する.本研究では,日本における公営プラネタリウム施設の上映プログラムの実態を整理し,施設サービスの全国的な傾向をとらえることを目的とする.</p><p>2.調査の手法</p><p> 公営施設のうち団体利用専用施設を除いた195館を対象とし,2023年11月下旬に各施設の自治体および施設ウェブサイトの公開情報を閲覧調査した.上映タイムテーブルと上映プログラムを整理し,各施設の演目内容の種類・見学者対象を分類し,GISを用いて分析した.</p><p>3.結果</p><p> 日本の地域区分ごとにみると,配給番組は北海道以外の地域で実施館数の割合が30~60%を占め,全国的に浸透している.自主企画制作番組は,関東・中部・近畿で件数が多く,指定都市・中核市で実施され,都市規模に依存する.乳幼児対象番組は近畿で,大人対象が明確化された番組は東北・関東で比較的多く,地域で差が生じている.都市規模の小さな自治体施設では,定期上映番組がなく,年間でイベント上映を実施している所もあり,地域密着のサービスを提供していることが明らかになった.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390018384729581056
  • DOI
    10.14866/ajg.2024s.0_254
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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