地震・津波に対する住民個々の備えに関するアンケート調査

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タイトル別名
  • Questionnaire survey regarding individual residents' preparedness for earthquake and tsunami
  • Review of “Earthquake and Tsunami disaster prevention drills” by Cabinet Office in Nishinoomote and Amami
  • 西之表市・奄美市での内閣府「地震・津波防災訓練」の振り返り

抄録

<p>【はじめに】西之表市と奄美市で行われた内閣府「地震・津波防災訓練」で,参加者に「地震・津波への備え」アンケート調査を実施した。本研究では,この分析を通じて,同訓練の内容を振り返ることを目的とする。</p><p>【内閣府「地震・津波防災訓練」の概要」】内閣府は,「津波防災」に関する取り組みの一つとして,平成26年度以降,全国の地方公共団体と連携した「地震・津波防災訓練」を実施している。令和5年度には全国10自治体で実施され,いずれも,モデル地区等での訓練前ワークショップ(WS),訓練,訓練後WSが行われた。演者が「防災専門家」として参画した西之表市と奄美市では,事前の測量や聞き取り調査から「地域の実情」にかかわるデータを得た上で,訓練の成果を地区防災計画や個別避難計画に生かす予定である。訓練では,シェイクアウト訓練,津波避難訓練,情報伝達訓練,防災に関する講話等が行われた。参加者数は,西之表市計1,865名(訓練前WS 150名,訓練1,644名,訓練後WS 71名),奄美市計1,743名(訓練前WS 25名,訓練1,693名,訓練後WS 25名)。</p><p>【調査方法】訓練前WS(西之表市:2023年10月18日,奄美市:10月20日)後,参加者に①地震への備えおよび②津波への備えにかかわる質問紙に回答してもらった。回答者は,西之表市が参加者150名中91名,奄美市が参加者25名中13名。</p><p>【調査結果】紙面の都合で西之表市でのものを一部掲載。</p><p>《①地震への備え》Q3「家屋の造りは、何ですか?」木造 79.5 %, 鉄筋造 14.0 %, RC造 5.4 %,わからない 1.1 %。Q4「旧耐震、新耐震のどちらか?」旧耐震 37.4 %, 新耐震 36.3 %, わからない 23.1 %, 未回答 3.3 %。Q5「昼によくいる場所に、地震時に物が倒れてこないか?」 A倒れてこない 64.8 %,B倒れてきそう 33.0 %, わからない 2.2 %。「Aの理由」倒れそうなものを置いていない 28.4 %, 転倒防止対策等実施済 8.3 %, 低いものしかない 3.3 %,その他3.3 %,未回答 56.7 %。「Bの理由」置いてあるものへの不安(タンス,テレビ)35.3 %, 未固定・固定不足 26.5 %, 耐震強度不足・築年数 5.8 %, その他5.8 %,未回答26.5 %。Q7「寝床に物が倒れてきませんか?」A倒れてこない 73.6 %, B倒れてきそう 26.4 %。Q8「夜の地震時には、どのように防ぎますか?」屋外への移動 33.0 %, 屋内での行動 26.8 %, 事前の準備 19.6 %, その他3.6 %,未回答17.0 %。</p><p>《②津波への備え》Q1「自宅地面の標高は、何メートルですか?」 5 m未満12.1%, 5 m以上10 m未満4.4%, 10 m台14.3 %,20 m台8.8 %, 30 m台14.3 %, 40 m台7.7 %, 50 m以上31.9 %, 未回答等6.6 %。Q3「家屋は、何階建てですか?」1階72.5 %,2階23.1 %,3階2.2 %,4階1.1 %。Q4「地震発生後、自宅から何分で出られますか?」「昼」1分以内26.4 %,3分以内20.9 %,5分以内28.6 %,10分以内15.3 %,15分以内4.4 %,20分以内1.1%,未回答3.3 %。</p><p>【考察】《①地震への備え》Q3「木造79.5 %」Q4「旧耐震37.4 %」であり,震度6弱以上の揺れに見舞われた際には,家屋が倒壊する恐れが高い。「シェイクアウト訓練」で模範とされるようにテーブル等の下に隠れても,それが脆弱な場合,家屋の倒壊に耐えられずに潰されて圧死する可能性が高い。また,夜間睡眠時や高齢者の緩慢な動作等も考慮すると,地震による危害の回避に「住民の行動」のみに依らず,家屋が倒壊した場合でも隙間が残されるように家具の配置を工夫する等,「生存空間の確保」を重視した家屋点検的な内容の方が被害軽減に有効であろう。</p><p>《②津波への備え》内閣府(防災担当)「避難情報に関するガイドライン(令和3年5月)」での「立退き避難」「屋内安全確保」等を発災時に住民が選択するには,①気象庁による防災気象情報や自治体による警報等だけでなく,②住家(≒居合わせた場所)およびその周辺での安全/危険にかかわる場の情報,③体力等の避難者個人の特性等も考慮して総合的な判断が求められる。それには,Q1「自宅地面の標高」Q3「何階建て」Q4「自宅を何分で出られるか」等,②と③に関する項目の認識を質問紙等で確認するとともに,項目に関する検証(例えば,実際の測量等)を行い,その認識と現実とのズレを補正するような訓練が効果的であろう。そして,住民個人の備えにかかわる内容を,個々に具体的に検証してデータ化しつつ,要配慮者でなくても個別避難計画に順次まとめ,地区防災計画とも連動させていく必要があるだろ。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390018384729614208
  • DOI
    10.14866/ajg.2024s.0_327
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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