ヒト篩骨洞と下鼻甲介粘膜由来細胞における間葉系幹細胞マーカー発現と多分化能の観察

  • 大和 賢輔
    広島大学大学院医系科学研究科耳鼻咽喉科学・頭頸部外科学研究室
  • 岡本 由香子
    広島大学大学院医系科学研究科耳鼻咽喉科学・頭頸部外科学研究室
  • 竹野 幸夫
    広島大学大学院医系科学研究科耳鼻咽喉科学・頭頸部外科学研究室
  • 川住 知弘
    広島大学大学院医系科学研究科耳鼻咽喉科学・頭頸部外科学研究室
  • 竹本 浩太
    広島大学大学院医系科学研究科耳鼻咽喉科学・頭頸部外科学研究室
  • 石川 智慧
    広島大学大学院医系科学研究科耳鼻咽喉科学・頭頸部外科学研究室
  • 石野 岳志
    広島大学大学院医系科学研究科耳鼻咽喉科学・頭頸部外科学研究室
  • 弓削 類
    広島大学大学院医系科学研究科生体環境適応科学研究室
  • 黒瀬 智之
    広島大学大学院医系科学研究科生体構造学研究室
  • 寺西 正貴
    広島大学大学院医系科学研究科生体環境適応科学研究室

書誌事項

タイトル別名
  • Expression of Mesenchymal Stem Cell (MSC) Markers and Differentiation Processes in Cultured Cells from Human Ethmoid Sinus and Inferior Turbinate Mucosa

抄録

<p>体性幹細胞である間葉系幹細胞(mesenchymal stem cells(MSCs))を用いた再生医療の研究は,主に脳梗塞,脊髄損傷などを対象にすでに国内外で臨床研究や治験が行われている。MSCsは腸骨,臍帯,脂肪から採取され,部位依存性的に分化能が異なることが知られている。今回我々は,正常ヒト鼻副鼻腔粘膜からのMSCs細胞の単離と培養を試みた。副鼻腔炎病態を有さない篩骨洞及び下鼻甲介より回収した細胞を培養し,MSCs特異的細胞表面抗原マーカーの発現,骨芽細胞,脂肪細胞,神経細胞への分化能について解析し,両部位間の比較を行った。</p><p>機械的・酵素処理により分散播種し得られた細胞は紡錘状の形状で接着性を有しており継代培養可能であった。細胞の細胞表面抗原の解析では,MSCsの陽性マーカーであるCD44,CD73,CD90,CD105の高発現とCD34,CD45の陰性が観察された。また,骨芽分化誘導した細胞ではAlizarin red染色陽性のカルシウム沈着,脂肪分化誘導した細胞ではオイルレッド染色陽性の脂肪滴沈着が観察され,神経誘導した細胞では神経細胞のマーカーであるTuj1,NF-M,NeuNの陽性所見が観察された。これらの結果は,国際細胞治療学会によるMSCsの定義条件に合致していた。また篩骨洞と下鼻甲介由来の細胞間で抗原陽性率と分化能に関して相違は観察されなかった。以上よりヒト顔面骨の広範な領域を被覆している鼻副鼻腔粘膜にはMSCsとしての潜在能力を有している間葉系細胞が豊富に存在しており,再生医療における新たな可能性に寄与することが示唆された。</p>

収録刊行物

参考文献 (18)*注記

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