治療回復後に十二指腸ポリープからの大量出血を生じたツツガムシ病の1例

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タイトル別名
  • A case of scrub typhus with massive bleeding from duodenal polyp after therapeutic recovery

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説明

<p>関連する既往のない50歳代の男性が,7日前から生じた倦怠感,食思不振,呼吸困難を主訴に当院へ救急搬送された。敗血症性ショックと診断され救急科に入院となった。昇圧剤と抗菌薬による治療が開始されたが全身状態の改善がなく,入院翌日に原因精査のため当科に転科となった。身体診察では発熱と散在する紅斑性皮疹に加えて右腋窩に黒色痂皮を認め,ツツガムシ病が強く疑われた。血液検査では血小板とフィブリノーゲンが低下しており播種性血管内凝固(DIC)の状態だった。ミノサイクリンによる治療を開始し全身状態は改善傾向になったが低フィブリノーゲン血症は継続した。入院5日目に消化管出血による出血性ショックが発生し,緊急内視鏡では十二指腸の有茎性ポリープからの出血が生じており内視鏡的クリッピング術が行われた。しかしその後もDICとショックの状態が継続したため,入院7日目に十二指腸ポリープに対して緊急ポリペクトミーを行いショックとDICは改善した。ポリープは腺腫であり,ツツガムシ病で生じる消化管出血でみられる血管炎の所見はなかった。ツツガムシ病はリケッチアであるOrientia tsutsugamushiがツツガムシの刺咬により伝搬するダニ媒介感染症である。重症化は全身の血管炎によって生じ,全身状態が改善しないまま様々な合併症が生じ,消化管出血も稀な合併症の1つである。本症例は治療により一旦全身状態が回復した後に,遷延する凝固異常によって十二指腸ポリープから出血し緊急ポリペクトミーによって改善した。ポリープの病理に血管炎の所見はなく,遷延する凝固異常がもたらした出血であると考えられ,これまで報告されているツツガムシ病の消化管出血とは異なる機序で生じていたと考えられた。ツツガムシ病では治療により全身状態が回復しても,凝固異常が遷延している場合消化管出血の発症に注意する必要がある。</p>

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