抄録
本稿は、ソーシャルロボットの普及に伴って生じつつある倫理的問題として、ロボットユーザーへのステレオタイプ・偏見の問題について警鐘を鳴らすことを目的とする。ロボットユーザーを一概に孤独だと見なすステレオタイプ・偏見が学術界を含む社会に蔓延し始めており、それがユーザーへの不利益や社会への悪影響をもたらす可能性がある。そこで本稿では、従来のメディア(ゲーム、インターネット、ソーシャルメディア、等)を巡って生じた事態を参考にしつつ、また「証拠に基づくロボット倫理」のアプローチに従って、当該のステレオタイプ・偏見に検討を加える。まず、フィクション作品『イヴの時間』での描写を参考に、ロボットユーザーへの偏見がどのような仕方で生じうるかを考察する。次いで、当該の偏見が、現実でも、高齢者等に対する既存のステレオタイプと結びつく形で生じており、特にロボティクスやロボット倫理の文献に見られることを指摘する。さらに、それが今後ロボットの悪影響論と結びつくことでより深刻な事態を招きうることを主張する。結論として、ステレオタイプ・偏見や悪影響論に対処するために、ロボット倫理に携わる者は科学的証拠に基づく議論を行う責任を自覚する必要がある、と説く。
収録刊行物
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- 応用倫理
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応用倫理 15 3-14, 2024-03-31
北海道大学大学院文学研究院応用倫理・応用哲学研究教育センター
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390018506586240896
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- HANDLE
- 2115/92023
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- ISSN
- 18830110
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- IRDB
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用可