ポストモダンダンスにおける観客性と「身体的共感」

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書誌事項

タイトル別名
  • Spectatorship and Physical Empathy in Postmodern Dance
  • with a Focus on Yvonne Rainer's Works
  • イヴォンヌ・レイナーの作品を中心に

抄録

本論は、1960年代アメリカで生まれたダンスの動向であるポストモダンダンスの中心的人物であったイヴォンヌ・レイナーの作品におけるダンサーと観客の関係性を論じ、身体を介した共感とは何かを明らかにするものである。<br> ポストモダンダンスの振付家/ダンサーたちは、物語や感情の表現に重きを置く伝統的なダンスへの抵抗として日常的な動作や即興を取り入れた。なかでもレイナーはダンサーと観客の関係性に意識的な振付家であり、物語への没入を否定して、見る−見られるという関係そのものをダンスの問題として扱った。本論では、現在の一般的な共感論を踏まえ、ダンスの歴史において想定されてきた受動的な観客像に抗する実践としてレイナーの作品を検討する。そのうえで、身体を通して自他が重なり合うのではなく、むしろ自己と他者の差異を発見することで生まれる共感のあり方を「身体的共感」と定義し、それがレイナーの作品でどのように試みられていたのかを分析する。<br> ベトナム戦争の報道が盛んに行われていた当時、他者の身体を見るということは一つの倫理の問題であった。レイナーは「見ること」そのものを観客の能動性として捉え、その窃視症的な欲望を暴くことによって、あるいは身体的負荷を課すことによって、ダンサーと観客の距離を模索していた。その実践は、他者との関係にもう一度身体を取り戻す身体的共感の契機を示している。

収録刊行物

  • コモンズ

    コモンズ 2024 (3), 192-218, 2024

    未来の人類研究センター

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390018594844070144
  • DOI
    10.57298/commons.2024.3_192
  • ISSN
    24369187
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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