福祉制度の人類学的研究に向けて
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- 辻本 侑生
- 弘前大学
書誌事項
- タイトル別名
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- Toward the Anthropological Study of Public Welfare Systems
- An Analysis of the Concept of "<i>JIRITSU</i>" in the Japanese Long-Term Care Insurance System
- 日本の介護保険制度における「自立」概念の分析から
説明
<p>本論文は、福祉制度それ自体に関する人類学的考察の不足という課題を踏まえ、日本の公的介護システムである介護保険制度がどのようなプロセスで成立したのか、特にどのようにして高齢者の「自立」支援が理念化されていったのかという点について、一次・二次資料を用いて記述・分析したものである。調査の結果、介護保険制度における「自立」概念は、障害者運動の流れを踏まえつつ、劣悪な状況に置かれていた高齢者により良いケアを提供しようとする現場福祉職員や、それに共鳴する有識者・厚生省官僚の協働の中で生まれた理念であったことが明らかになった。他方で、介護保険制度の制度設計当初から財政的な限界が見据えられていた中で、「自立」の概念が、ケアの対象者を制限しようとする論理の中でも用いられていたことも明らかになった。以上の経緯について、本論文では、人類学者、アネマリー・モルの「選択のロジック/ケアのロジック」の議論を補助線に分析し、2つの意味の異なる「自立」が、いずれも高齢者本人の意思や選択を重視する「選択のロジック」に基づいていたからこそ併存していたことを指摘した。</p>
収録刊行物
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- 文化人類学
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文化人類学 88 (3), 435-451, 2023-12-31
日本文化人類学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390018605924546048
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- ISSN
- 24240516
- 13490648
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可