マレーシア•サラワク沖における炭化水素鉱床中の二酸化炭素の起源:マイグレーションモデリングをもちいた簡便な手法による検討からの示唆

書誌事項

タイトル別名
  • Testing CO<sub>2</sub> charge scenario in the petroleum reservoirs in offshore Sarawak, Malaysia: A simplified migration modeling approach

説明

<p>炭化水素探鉱において高CO2 濃度の鉱床を避ける上で,その地域における鉱床中の CO2 の起源を理解することはひとつの鍵となる。しかし,ガス同位体データの不足または欠如により CO2 の起源を特定できない場合も少なくない。マレーシアのサラワク沖はその一例であり,無機起源の CO2 を高濃度で含有する炭化水素鉱床が認められるが,ヘリウム同位体データの欠如により CO2 がマントル起源か炭酸塩岩起源かについて結論が得られていない。そこで,本研究ではマイグレーションモデリングをもちいた簡便な手法によってサラワク沖における炭化水素鉱床中の CO2 の起源推定を試みた。マントル起源シナリオでは地殻の薄化部および主要横ずれ断層沿いに CO2 が供給されたと仮定してマイグレーションモデリングを実施した結果,高 CO2 濃度の鉱床が主にNorth Luconia 構造区,West Luconia 構造区,Baram Delta 構造区,および主要横ずれ断層(West Balingian および West Baram 構造線)沿いに分布すると示唆された。一方,炭酸塩岩起源シナリオでは,陸棚上で堆積し堆積盆の深部に埋没した炭酸塩岩から CO2 が生成されたと仮定し,マイグレーションモデリングの結果から高 CO2 濃度の鉱床が Central Luconia 構造区, Balingian 構造区,North Luconia 構造区南東部,Baram Delta 構造区西縁部,および Tatau 構造区の南東縁辺に分布すると示唆された。鉱床のCO2 濃度データと比較すると,陸棚上に発達した厚い炭酸塩岩を起源物質とするシナリオではサラワク沖の全ての CO2 の分布を説明できないことが明らかになった。一方,マントル起源シナリオに基づくマイグレーションモデリングでは実測データに対してより整合的な結果が得られたことから,マントル起源の CO2が補足的あるいは主要な供給源となりうる可能性が示唆された。本研究でもちいた簡便な手法による推定は鉱床中の CO2 の起源を結論づけるものではないものの,特に地化学データの不足または欠如により CO2 の起源を特定できない地域において,その起源を推定するためのひとつの有効な手法となりうる。</p>

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