照応表現「自分」をめぐる諸問題 : GrammarXivを用いた論点整理と将来的展望

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  • ショウオウ ヒョウゲン「ジブン」オ メグル ショモンダイ : GrammarXiv オ モチイタ ロンテン セイリ ト ショウライテキ テンボウ

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日本語の照応表現である「自分」は、日本語文法研究において、名詞句の主語性や、あるいはC統御(c-command)に基づく構造的優位性のテストとして盛んに用いられてきた文法項目である。本研究は、「自分」が現代的な言語研究においてどのように参照され利用されているかを紐解くために、日本語言語学(Japanese Linguistics)において定評のある比較的最近のハンドブックであるMiyagawa and Saito(2008)、村杉他(2016)、Hasegawa(2018)を取り上げ、その各チャプターが「自分」をどのように論述の証拠やテストに用いているかを検証した。本研究の成果は言語理論・仮説・データのオープンアクセスデータベースGrammarXivに収録され、ユーザーによる投票評価やメンション・ディスカッションなどを継続的に受け付ける形で公開されている。 本稿は以下のように構成される。1節では、「自分」に関する理論言語学・日本語研究における現状について概観する。2節では、本研究が依拠する理論言語学オープンアクセスデータベースGrammarXivの概要を説明する。3節では、日本語文法研究において比較的最近のハンドブックであるMiyagawa and Saito(2008)、村杉他(2016)、Hasegawa(2018)の3篇をとりあげ、そこで「自分」に言及している例文データ、およびそれに紐付けられた仮説を網羅的に登録した関係ネットワークをGrammarXivによってグラフ表示した結果を示す。4節では、特に上記3篇のハンドブックの中で「自分」の主語指向性とC統御要件がどのように扱われているかを示す部分グラフを紹介する。5節では、上記3篇のハンドブックの各チャプターおよびOshima(2004)に収録された、主語指向性およびC統御要件の反例となるデータを巡る部分グラフを紹介する。6節では、いくつかのハンドブックにおいて議論の核をなしていると思われる容認性判断データを取り上げ、その再現性について検討するとともに、データの客観性・再現性が必ずしも確保されていないと思われる容認性判断データがハンドブックチャプター等の出版論文にて使用され続けている状況を指摘する。また、このような場面にて、GrammarXivが出版後の論文にも様々なデータ更新や後続議論との紐付けを行えるという相互補完的な利点を有することを論じる。7節は結語となる。

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