何が分かって、何が変わった?薬剤関連顎骨壊死PP2023

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2003年Marxが、ビスホスホネート(BP)製剤を使用している悪性腫瘍および骨粗鬆症患者に、薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)が生じることを報告した。近年では、抗RANKLモノクローナル抗体や抗スクレロスチン抗体製剤もMRONJの発症に関わっていることが分かり、MRONJの報告者数は増加傾向にある。 MRONJの本質は顎骨に生じた骨髄炎であり、口腔内細菌を起炎菌とした口腔感染症である。しかし、MRONJは薬剤に起因した顎骨壊死という、センセーショナルな内容が先走りしたことにより、口腔感染症という本質が見過ごされてきたと考える。実際MRONJ に対して、日本骨代謝学会などが中心となって作成されたポジションペーパー 2012 年版では、「治療の目的は症状の緩和と進行予防である」、「治療法については洗浄や抗菌薬投与などの保存療法を中心とする」、「骨粗鬆症患者の高リスク例では侵襲的歯科治療を行う前後に骨吸収抑制薬を一定期間休薬する」、「悪性腫瘍患者では侵襲的歯科治療をできるだけ避ける」などと記載されている。顎骨骨髄炎の治療は外科的治療が第一選択であり、本来根治的治療が十分望めるはずなのに、ポジションペーパー2012年版では「症状緩和や進行予防」、「抜歯前のBP製剤の休薬」といったおおよそエビデンスとは程遠い内容が記載され、その後の臨床現場に混乱をきたしてきた。2023年7月に日本口腔外科学会が中心となり、顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2023(顎骨壊死PP2023)が発刊された。ここではMRONJ治療の新しい見解や、抜歯前BP製剤の休薬の是非に関してなど、今まで蓄積されたデータをもとにMRONJに対する新しい知見が述べられている。 今回我々は、当科で行ってきたMRONJ治療と、顎骨壊死PP2023を紹介するとともに、MRONJに関して今後解決すべき課題について述べる。

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