書誌事項
- タイトル別名
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- Changes in the Position and Role of Japanese Pharmacists --150 Years of History from Meiji to the Present--
- ニホン ノ ヤクザイシ ノ タチ イチ ト ヤクワリ ノ ヘンセン : メイジ カラ ゲンザイ マデ ノ 150ネンシ
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説明
日本の薬剤師の歴史は1874(明治 7)年の医制の公布に始まり,2024年には150年を迎える.この間,医療と薬剤師を取り巻く環境は大きく変化した.本稿では,医薬分業,薬事医事制度および薬学教育などの社会的要因を背景に,薬局薬剤師と病院薬剤師がそれぞれ異なる環境のなかで,どのように立ち位置を変え,それぞれの役割や業務を変革して薬剤師職能を拡大してきたかを概説する.殊に医薬分業が医制から100年にわたり進まなかった影響は大きく,この間,薬局薬剤師は調剤がほとんどできなかったが,病院薬剤師は調剤技術を発展させ調剤を担う技術者としての道を歩んだ.1974 年の医薬分業元年を経て,薬局薬剤師は次第に調剤を担う技術者へと転換し,病院薬剤師は 1988 年の入院調剤技術料の新設を機に患者志向の病棟業務に移行し,薬剤師業務は「対物」から「対人」へと大きく転換した.1992 年の医療法改正で薬剤師は医療の担い手としての責務を負うとともに,患者中心のファーマシューティカルケアが薬剤師業務の方向性を示すものとして広がり始めた. チーム医療の重要性と推進策が示された2010年以降,病院薬剤師はチーム医療における薬の専門家として医療を支え,薬局薬剤師はかかりつけ薬剤師・地域医療の担い手として専門性を活かして地域に貢献する時代へと変化しつつある.2019年には患者が自身に適した薬局を選択できるような機能別の薬局認定制度も始まった.薬剤師は医薬品の適正使用と医療安全を両輪に,個々の患者の薬物療法に責任をもって参画し薬学的管理と指導を行うとともに,地域住民の健康維持や相談窓口としての役割も求められる時代になった.
収録刊行物
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- 薬史学雑誌
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薬史学雑誌 59 (1), 41-56, 2024-06-30
日本薬史学会