マドゥスーダナの教学における最高神に対するバクティの位置づけ

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タイトル別名
  • The Position of <i>Bhakti</i> for the Supreme Deity in the Doctrine of Madhusūdana Sarasvatī
  • The Position of Bhakti for the Supreme Deity in the Doctrine of Madhusudana Sarasvati

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説明

<p> アドヴァイタ・ヴェーダーンタ学派の学匠マドゥスーダナ・サラスヴァティー(ca. 16th–17th CE)は,主に聖典Bhāgavatapurāṇaに依拠し,彼のBhaktirasāyanaṭīkā) (BhR(Ṭ)) においてアドヴァイタ教学の一元論と齟齬をきたさないように,人格的な最高神に対して専一に帰依するバクティ理論を形成した.彼はBhR(Ṭ) において,ブラフマンの明知の獲得によって解脱を得ることを目的とする「知のヨーガ」と「バクティ・ヨーガ」を厳格に区別し,BhR(Ṭ) においてはバクティ・ヨーガの方がより優れていると主張している.しかしその一方でマドゥスーダナは,聖典Bhagavadgītāに対する彼の註釈Gūḍhārthadīpikā (GAD) においては,BhR(Ṭ) と同様に最高神に対するバクティによって解脱が可能としながらも,知のヨーガをバクティ・ヨーガよりも優れたものと見做している.いったいマドゥスーダナは,これら二つの立場のうち,どちらを最終的な立場と考えていたのであろうか.本稿では,以下の操作によってこの問題に対する答えを導出した.</p><p> マドゥスーダナは,BhG第12章に対するGADにおいて,無属性ブラフマンへの念想(nirguṇopāsana)と有属性ブラフマンへの念想(saguṇopāsana)とのどちらが優れているのかを論じている.本稿では,BhG第12章に対するGADを分析することによって,先ずnirguṇopāsanaが知のヨーガに属していることと,saguṇopāsanaにはBhR(Ṭ) に説かれているバクティが含まれていることを明らかにした.さらに,マドゥスーダナはGADにおいて,知のヨーガに属すnirguṇopāsanaがバクティ・ヨーガを含むsaguṇopāsanaよりも優れていると主張している.GADにおけるバクティ論は,BhR(Ṭ) に見られるバクティ論に全面的に依拠している点,またGADにおいて駆使されている「非難」(nindā)に関する解釈規則(nyāya)の点を考慮すると,マドゥスーダナはnirguṇopāsanaのsaguṇopāsanaに対する優位性を主張することで,知のヨーガがバクティ・ヨーガよりも優れていると考えていたことが理解され,またこの立場が彼自身の最終的な立場であると考えられる.</p>

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