初期瑜伽行派における五事説の分析

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タイトル別名
  • An Analysis of the <i>pañcavastu</i> Theory in the Early Yogācāra Tradition
  • An Analysis of the pancavastu Theory in the Early Yogacara Tradition

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説明

<p> 相(nimitta),名(nāman),分別(vikalpa),真如(tathatā),正智(samyagjñāna)よりなる五法または五事(pañcavastu)の理論は,大乗経典に三性説と共に現れ,後に瑜伽行派の代表的な理論となった.この二つの理論はいずれも世俗または勝義の諸法(dharma)を説明する点で等しい.歴史的にいずれの理論が先に現れたかは明確ではない.舟橋(1972)は三性説が五事説よりも先に現れたと主張するが,高橋(2005)は五事説が『解深密経』三性説の形成の基盤となったと主張している.後者によれば最初の最も包括的な五事説の説明は,アサンガによる『摂決択分』で行われ,それが後代の学者達により再解釈されたという.</p><p> 本論文は『摂決択分』,『入楞伽経』,『中辺分別論』およびその諸註釈などの瑜伽行派文献に見られる五事説の解釈の違いを示すものである.これらの文献は五事説を完全な形で体系的に示す点で重要であるが,三性説との対応関係については相互に異なった見解を提示するものである.本論文では,五事説に関する多様な解釈に関して基礎的な考察を与える.特に相(nimitta)の概念の多義性(「特徴」「根拠」)に注目し,それを遍計所執性(parikalpitasvabhāva)と依他起性(paratantrasvabhāva)のいずれに含めるかをめぐって文献ごとに異なった解釈が生まれたことについて合理的な説明を試みる.</p>

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