虎関師錬の『楞伽経』理解――「宗旨」に関する議論を中心に――

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タイトル別名
  • Kokan Shiren’s Interpretation of the <i>Laṅkāvatāra </i><i>Sūtra</i>: Focusing on the Theory of the “Essence” of the Sutra
  • Kokan Shiren's Interpretation of the Lankavatara Sutra : Focusing on the Theory of the "Essence" of the Sutra

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説明

<p> 本稿は,虎関師錬(1278–1346)が著わした『四巻楞伽』に対する注釈書『仏語心論』の検討を通して,師錬が『楞伽経』という経典,特にその「宗旨」(中心的教説)をいかなるものと理解していたかを明らかにする.師錬は,『楞伽経』の「宗旨」について「証の宗旨」「修の宗旨」の二つの観点より説明し,一貫して当該経典が「妄即真」「真妄不二」を中心的教説としていると主張する.さらに,かかる「宗旨」論にもとづき,師錬は,『楞伽経』が八識説を採用し第九識・第十識を立てない経典であると繰り返し強調する.師錬の理解において,九識・十識説は機根の低い者向けの教説であり,「根熟の者」が集った『楞伽経』では「妄即真」を示し八識説を説けば十分であった,と解釈されるのである.また,師錬がこのような主張を強調する背景として,『四巻楞伽』の同本異訳にあたる『十巻楞伽』の記述を念頭に置いた可能性,あるいは九識説や十識説を採る天台・真言教学と『楞伽経』の教説(およびこれに基づく自らの思想)との峻別を図った可能性を想定することができる.</p>

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