The formation process of temperature inversion in Senri-do doline in Maikomi-daira, Niigata Prefecture

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  • 新潟県マイコミ平千里洞ドリーネにおける温度逆転の形成過程

Description

<p>マイコミ平は,青海石灰岩からなる黒姫山(1222m)の南部に位置する,直径約1kmの溶食凹地である.さらにその内部に,ドリーネ・ポノール・竪型洞窟などのカルスト地形が発達していて,千里洞ドリーネもその一つである.千里洞ドリーネは,上端で東西70m,南北50mの広がりを持ち,深さは約30mある.標高666mにあるドリーネ底部には,深度405mの日本で2番目に深い竪型洞窟である千里洞がある.ドリーネ内には冷気がたまり,温度の逆転が認められる.そのため,ドリーネ底部付近には,標高2500m級の高山植物の群落が見られる.本研究では,千里洞ドリーネにおいて,複数の深度で気温の通年観測を行い,温度逆転の形成過程について検討した.</p><p> 千里洞ドリーネにおける温度構造の形成過程を把握するために,ドリーネの異なる深さ(底部,底部から10m,20m,30m)に,温度ロガーを設置して観測を行った.また,千里洞から吹き出す冷気の風速,気温の変化を把握するために,洞口で風速及び気温の測定を行った.</p><p> 2020年10〜11月においては,深度別の温度差は,ほとんど見られなかった.12月中旬に積雪があり,ドリーネ底部と中段は雪に覆われ,日変化が見られなくなる.ドリーネ上段は,冬季をとおしてほとんど積雪に覆われず,顕著な日変化を示し,氷点下も記録している.2021年5月13日に中段が,8月9日に底部が,積雪から開放されて日変化を示すようになる.しかし,その後も上段,中段,底部の間に系統的な温度差が存在し,温度の逆転が認められる.しかし,その後,10月19日に深度別の温度差が消失する.</p><p> このような温度変化から,温度逆転の要因について検討した.日変化と関係なく,日をまたいで逆転構造が継続することから,温度逆転は,底部からの放射や冷気の流入によるものではないと考えられる.また,積雪が消失しても逆転構造は継続するので,積雪が原因ではない.千里洞竪穴洞窟からは,5〜6℃の冷気が継続して吹き出していることが観測されていることから,この冷気がドリーネ底部に溜まって,温度逆転を形成しているものと考えられる.この冷気の吹き出しが10月中旬に消失することによって,温度逆転が解消されたと考えられる.</p>

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