上腕二頭筋腱長頭(LHB)に着目した腱板断裂患者に対する保存療法の一例
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- 浅賀 寛人
- 医療法人社団君津あすなろ会 小見川あすなろクリニック リハビリテーション科
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説明
【はじめに,目的】 腱板断裂において,上腕二頭筋長頭腱(以下LHB)の障害を伴う 事が多く,また仲川らによると断裂範囲に相関すると報告されてい る.今回,腱板広範囲断裂を呈した症例に対し,LHBへの介入を 行う事で改善効果を得たのでその結果を報告する. 【症例紹介,評価,リーズニング】 70歳代男性.R5年12月中旬に受傷起点なく,右肩関節への疼痛 を自覚し,当院にて受診.棘上筋大断裂と診断された.外来リハ ビリテーションを週1回の頻度で実施した.主訴は疼痛・ROM制 限であった.初期評価時,肩関節安静時痛NRS 2,更衣動作時 痛NRS 7であり,疼痛部位は肩峰下・上腕結節間溝であった.自 動ROMは肩屈曲120°,外転90°,2nd内旋45°,肘伸展-5°で あった.MMTでは三角筋中部線維3,前鋸筋3,僧帽筋中部線維 4,菱形筋3であった.Special testではYargasons(+)empty can(+),Berry press(-),アライメントでは右肩甲帯外転位,胸 郭右下制,右肩甲骨下制・下方回旋・右上腕骨上方前方偏位が確 認された. 【倫理的配慮,説明と同意】 患者本人に個人情報とプライバシー保護について口頭にて説明を 行い,書面にて同意を得た. 【介入内容と結果】 疼痛要因である肩峰下インピンジメントについては胸椎後弯姿位 による小胸筋の短縮,前鋸筋・肩甲挙筋での過緊張と三角筋中部 線維・僧帽筋中部線維の筋力低下により生じていた為,短縮筋へ のリラクゼーション,筋力強化訓練を実施した.また上腕骨頭前 方偏位によるLHB滑走不全に対し,周波数3Mhz 0.8 ~ 1 W/㎝ での超音波療法を実施した.理学療法を開始して5か月後,安静 時痛NRS0,結髪・更衣動作時痛NRS 3と減少した.自動ROM は屈曲150°外転120°,1St外旋60°,2nd内旋65°と可動域の改 善が見られた.MMTでは三角筋中部線維5,前鋸筋5,僧帽筋中 部線維4,菱形筋4と筋力の改善が見られた. 【考察】 Refiorらは腱板断裂が進行することによりLHBに対する骨頭から の上方負荷が上昇し,LHBへの変性・損傷を加えると報告してお り三角筋中部線維・残存腱板筋力強化によるフォースカップル形成, また後下方組織へのリラクゼーションにより上腕骨頭中心化を獲得 できた.結果LHBへの圧迫ストレスを軽減・疼痛緩和が行われ可 動域の改善を図れたと考える.
収録刊行物
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- 関東甲信越ブロック理学療法士学会
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関東甲信越ブロック理学療法士学会 43 (0), 108-, 2024
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390021481777048448
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- ISSN
- 2187123X
- 09169946
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可