複数の精神障害を有する脳膿瘍患者に対し段階的な目標設定をしたことで良好な経過を辿った1症例

  • 加藤 未華
    セコメディック病院 リハビリテーション部
  • 千葉 弘樹
    セコメディック病院 リハビリテーション部
  • 林 優滋
    セコメディック病院 リハビリテーション部

Description

【はじめに,目的】 脳膿瘍は標準的な治療方法は未確立とされているが,機能予後は 良好.臨床所見としては脳浮腫を伴い,早期からの治療が必要とさ れている.目標設定では患者を参加させることの重要性が強調さ れており,精神障害患者では細かく段階的な目標設定が必要とさ れている.今回複数の精神障害があり,目標設定および活動度の 向上に難渋した症例を報告する. 【症例紹介,評価,リーズニング】 40代女性.入院前より生活保護を受給しており,既往歴には統 合失調症・パニック障害・左下肢のジストニアあり.右上下肢の 脱力が出現し救急搬送,前頭葉脳腫瘍疑いにてX月Y日開頭腫 瘍摘出術施行.MRI画像ではM1領域中心に広範囲の脳浮腫を 認めた.Y+1日より理学療法開始.Japan Coma Scale(JCS) Ⅰ-2.Brunnstorom Stage(BRS)はⅡ-Ⅰ-Ⅱ.感覚は軽度鈍麻 でPusher症候群・身体認識および体幹機能低下あり.Barthel Index(BI)は0点,Self Rating Depression Scale(SDS)は62点. 介入時に過呼吸や多量の発汗・慟哭・帰宅願望等が見られること あり.本人のHOPEは自宅に帰りたいであった.脳浮腫の改善に伴 い症状も改善していくと推測,精神症状に留意しながら介入を開始 し,最終的な目標を屋内ADL自立と設定した.SDSの得点からう つの傾向が高いのではないかと考えた. 【倫理的配慮,説明と同意】 ヘルシンキ宣言に基づき,対象者には十分に説明をした上で,自 由意思による同意を得た. 【介入内容と結果】 介入初期は非麻痺側下肢の機能向上に伴い,起居動作やADL動 作訓練から開始.精神症状や動作への拒否が見られた際は無理 に進めず,傾聴しながら現状のレベルに合わせて細かく段階的に 目標を設定,患者とともにプログラムの選定を行った.またうつに 対しては,出来ている事に対しての声掛けが必要とされている為, 出来ている事や経過でのフィードバックを行い,医師や看護師等 他職種からの声掛けも依頼した.その後車いす移乗が1人軽介助 レベルまで向上し,日中ポータブルトイレ使用に変更. Y+60日 目時点で短下肢装具の装着が自立し,歩行が付き添い-軽介助レ ベルまで向上,その後回復期病院転院.BRS Ⅳ-Ⅳ-Ⅳ.BIは60点, SDSは51点,Global Rating of Change Scaleは2だった. 【考察】 リハビリテーション遂行の妨げとなる精神症状に対して,患者と密 に目標共有をしながら段階的な目標設定およびプログラムの決定 を行うことで,脳浮腫の改善に合わせて活動度の向上を図ること が出来たと考える.

Journal

Details 詳細情報について

  • CRID
    1390021481777164416
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.43.0_233
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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