滋賀県における公社造林の展開過程

書誌事項

タイトル別名
  • The Delveopment of the Forest Corporation in Shiga Prefecture

説明

近年,拡大造林の伸展は著しく鈍化してきている。木材価格の低迷と林業労働者不足・労賃高騰がその主要因であると考えられるが,このような経営条件の悪化の中で,公社造林だけは着実に伸展している。そこで全国的に最も大規模に事業を行ない,かつ,それを県外からの出稼ぎ労働者を大量に(年約800人)引き込む形で行なっている滋賀県の公社造林をとり上げ,県外労務に依存を強めてくる過程,および,その労働力掌握構造を分析した。<br>当公社は,昭和40年に設立されたものであるが,この10年余の間にその育林労働は,部落請負による農民的なものから,土木事業的請負業者による賃労働的なものにと変化してきた。<br>公社は,初め半ば行き掛り的に請負業者(約100名)を掌握してきたが,その後両者の関係はほぼ固定した。しかし,その下での労働者の年々の入れ替りは激しい。出稼ぎ労働者は「当座の金」の高い方に流れるが,当公社はまさに,出来高賃金制の下での労働の自己強化によって,「高水準」賃金を形成し易い所としてあった。この「高水準」賃金によって,伐出業従事者からも,また他産業に一度流出していたものをも当公社に引きつけているのである。<br>しかし,育林労働の労働組織として定着するには,人為的に区分した作業目標に向ってその能率を高める形での労働強化だけではなく,これまで切り捨ててきた農民的なもの(土地集約性,生産―労働の自己完結性),および,老人・女性労働力をも再度くみ込み直して行く必要があるように思われる。

収録刊行物

  • 森林研究

    森林研究 50 (0), 99-114, 1978

    国立大学法人 京都大学フィールド科学教育研究センター

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390022554144532096
  • DOI
    10.60409/forestresearch.50.0_99
  • ISSN
    27593134
    13444174
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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