非弁膜症性心房細動における抗凝固療法の現状と心原性脳塞栓症発症予防への取り組み

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  • Underuse of anticoagulation and our strategies to reduce the incidence of stroke for patients with nonvalvular atrial fibrillation

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抄録

非弁膜症性心房細動(nonvalvular atrial fibrillation; NVAF) における心原性脳塞栓症の発症予防へのワルファリン(warfarin; WF) 療法の有効性は確立しているが, 臨床への応用は十分ではない. 脳梗塞を発症したNVAF症例における脳梗塞の発症前の抗凝固療法の実態およびNVAF症例のWF量調節におけるINR値変動を調査することでNVAFにおける抗凝固療法の現状と問題点を明らかにし, その改善を意図したわれわれの取り組みを紹介する. <BR>方法: 研究1; 2006年1月から2年間に脳梗塞で当院に入院した136例中NVAF38例の発症前の抗凝固療法の実態を調査した. 研究2; 2007年10月からの1年間にINR 1.6~2.6を目標に当院外来で継続治療したNVAF WF内服41例のINR値の変動を調べた.<BR>結果: 研究1; 脳梗塞で入院したNVAF38例中入院前に心房細動が診断されていた症例は23例(61%)で, WF服用は11例(29%)にとどまり, 入院時のINRが治療域であったのは4例(11%)のみであった. 研究2; INRが安定化した後のINR値(総数363回)の平均は1.93で治療域範囲内(INR 1.6~2.6)は73%であり, 1.6未満が20%, 2.61以上が7%であった.<BR>総括: 脳梗塞発症前にNVAF症例に十分なWF療法が行われていなかったこととINR 1.6~2.6を目標としたWF用量管理は73%で可能であったことから適切なWF療法の実践が急務と考えられた. NVAFからの心原性脳塞栓症の発症予防には, 心房細動の早期診断と抗凝固療法のさらなる啓発, 定期的なINR測定とWF量の調節が重要と考え, われわれは患者の啓発活動, 連携パスなどによる連携医を交えた心原性脳塞栓症の発症予防への取り組みを開始した.

収録刊行物

  • 心臓

    心臓 41 (9), 1005-1010, 2009

    公益財団法人 日本心臓財団

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