小笠原諸島の固有水生生物と陸水環境  小笠原諸島父島の河川におけるオガサワラモクズガニとカニ類の分布様式

  • 小林 哲
    佐賀大学農学部応用生物科学動物資源学講座システム生態学研究室
  • 佐竹 潔
    国立環境研究所

書誌事項

タイトル別名
  • Distribution patterns of the Ogasawara mitten crab Eriocheir ogasawaraensis and brachyuran crabs in the rivers and streams of Chichi-jima, Ogasawara(Bonin) Islands
  • 小笠原諸島父島の河川におけるオガサワラモクズガニとカニ類の分布様式
  • オガサワラ ショトウ チチジマ ノ カセン ニ オケル オガサワラモクズガニ ト カニルイ ノ ブンプ ヨウシキ

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抄録

オガサワラモクズガニは2006年に新種記載された小笠原諸島の固有種で,本土のモクズガニと同様の通し回遊種であるが,生態は不明の部分が多い。そこで 筆者らは2007年6-7月と11月の2回,父島の河川で分布調査を行った。父島の河川はいずれも流程は数km以下で流量も少なく,感潮域も数十m程度の短いものが多い。河川感潮域はメガロパが着底し稚ガニに変態する場所であり,淡水域へ遡上するまで留まることから,個体群の維持に重要と考えられる。調査の結果,非常に狭い範囲で新規加入を行っていることが明らかになった。甲幅13-23mmの未成体は相対的に歩脚が長く,標高の高い源流部から採集された。下流域よりも山地の渓流部が分布の中心で,基本的に水中生活だが成体が陸上を徘徊することも確認された。さらに採集努力量の割に捕獲数が少なく,本種が非常に危険な状態にあることも推察された。ヒライソモドキ,オオヒライソガニ,クロベンケイガニなどは,オガサワラモクズガニと同所的に河川の下流から上流にかけて採集された。概して小笠原の河川のカニ類は日本本土や沖縄に比べて多様性が低い傾向が認められた。

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参考文献 (53)*注記

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