Down症候群由来細胞における各種小児歯科用材料の細胞毒性について

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抄録

目的Down症候群は染色体異常を示す症候群の中で数多い.近年,彼らの平均寿命の増加に伴って,歯科材料の必要性も増してきていると考えられる.しかし,臨床で歯科材料を選択する場合に基準となる基礎データがほとんど無かった.薬剤では感受性が通常とは異なることも指摘されており,歯科材料分野での検討も必要である.そこで,Down症候群皮膚由来線維芽細胞様細胞と健常者皮膚由来線維芽細胞様細胞を用いて,小児歯科領域でも使用される根管充填材,覆髄剤および根管治療剤の細胞毒性レベルを検討した.材料および方法1.細胞培養液Down症候群皮膚由来線維芽細胞様細胞(Detroit 539)は,Eagle's Minimum Essential Earle's Balanced Salt Solutionに,容積比 10%FBS,NAA,sodium pyruvate,lactalbumin hydrolysate,L-glutamineをそれぞれ添加した.健常者皮膚由来線維芽細胞様細胞(HUC-F)は,MEM Alpha Mediumに容積比10%FBSとNAAをそれぞれ添加した.2.細胞培養単層培養法:細胞数をそれぞれ2.5×10^4cells/mLに調節し,マルチピペットにて96ウエルマルチディッシュに1ウエルあたり100mLづつ分注し,直ちに炭酸ガス恒温器(5%CO_2.95%空気,37℃)内で48時間静置培養した.3次元培養法:今井らの組織モデル作製法を参考に,Type Iコラーゲン(cellmatrix,新田ゼラチン)とインターセル(クラボウ)を用いて作製した.インターセルを24穴マルチディッシュに入れ,セルの外側に培養液を1mLずつ分注した.その後,炭酸ガス恒温器内で10日間静置培養した.3.試料液の作製歯科材料として,Kri 1,N 2 apical,N 2 universal,Neodyne for root canal filling,Neotriozinc pasta,Calvital,Dentalis KEZ,Vitapex,Dycal ivory,Periodon,Camphenic「Neo」,Creodon,Methocol,Saforide・RCを使用した.単層培養法:練和タイプは製造者指示方法により練和した.ペーストおよび液体タイプは計量し培養液に溶解した.濾過滅菌後に倍数希釈し各試験液を得た.3次元培養法:練和およびペーストタイプは単層培養法に準じた.液体タイプは滅菌した綿花に吸収させた.4.細胞毒性試験単層培養法:100mL/wellづつ各試験液を分注し,前記恒温器中で48時間細胞に作用させた.その後,生細胞数測定試液SF(ナカライテスク)を用いて,450nmの吸光度でIC50を比較した.3次元培養法:各試料を1時間作用させた後,生細胞数測定試液SFを用いて測定した.なお,両培養法ともに試料無添加条件を陰性対照群とした.結果および考察単層培養法:両細胞を比較すると,HUC-FがDetroit 539よりIC50が低下する傾向が認められた.また,パラホルムアルデヒド製剤と根管治療剤は強い細胞毒性を示した.また,水酸化カルシウム製剤とネオダイン製剤は,細胞毒性は弱い細胞毒性であった,3次元培養法:両細胞の比較では,単層培養の結果と同じ傾向を示しDetroit 539がより細胞毒性が弱くなる傾向が認められた.Down症候群のほとんどの核型を示す,トリソミー21の細胞が健常者の結合織由来細胞とは必ずしもその細胞レベルが一致しないことが明らかになった.本実験はin vitroでの結果であり,必ずしも臨床にそのまま当てはまらないが,ひとつの指標となるものであると考えられる.

収録刊行物

  • 歯科医学

    歯科医学 65 (2), 41-42, 2002

    大阪歯科学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282679184929664
  • NII論文ID
    110001724858
  • DOI
    10.18905/shikaigaku.65.2_41
  • ISSN
    2189647X
    00306150
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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