有限要素法による歯の初期動揺に関する研究

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  • Finite Element Analysis on Physiological Mobility of Individual Teeth

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抄録

有限要素法を用いて歯の初期動揺を調べ, その結果から歯根膜の力学的性状の推定を行った.解析には, 8節点アイソパラメトリック要素よりなる軸対称体有限要素法を用いた.上顎中切歯の歯軸方向に荷重を負荷したときを想定した.軟組織の応力-歪関係に見掛けの弾性係数の考え方を導入した.すなわち, 歯根膜および歯肉のような軟組織が応力依存の弾性係数をもつと考えた.最初のステージでは, 歯周組織の応力-歪分布は従来の方法で計算した.次のステージから, 計算に軟組織の見掛けの弾性係数を導入した.すなわち, 軟組織の見掛けの弾性係数を, 前ステージで計算された相当応力をもとに求めた.計算は, 変位量が収束するまで繰り返した.次のような結論を得た.1.歯の初期変位量は, 負荷荷重に対して比例関係でなく n 乗式で近似される非線形な関係を示し, 在来の臨床的実験結果と一致した.2.歯根膜は, 部位により異なった弾性係数をもつと考えられることが明らかになった.また, 弾性係数は歯槽縁および根尖部で低くなった.3.歯根膜の相当応力は, 歯槽縁および根尖部で顕著に低くなった.以上より, 見掛けの弾性係数の考え方が歯の初期動揺を調べ, 歯根膜の力学的性状を推定するために有用であると考えられた.

収録刊行物

  • 歯科材料・器械

    歯科材料・器械 9 (2), 189-196, 1990

    一般社団法人 日本歯科理工学会

被引用文献 (4)*注記

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