ラット歯周組織欠損の早期創傷治癒過程におけるIII型コラーゲン形成に及ぼすEnamel Matrix Derivative(EMD)の影響

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タイトル別名
  • Effect of enamel matrix derivative on the formation of type III collagen during early wound healing of periodontal defects in rats
  • ラット歯周組織欠損の早期創傷治癒過程における3型コラーゲン形成に及ぼすEnamel Matrix Derivative(EMD)の影響
  • ラット シシュウ ソシキ ケッソン ノ ソウキ ソウショウ チユ カテイ ニ オケル 3ガタ コラーゲン ケイセイ ニ オヨボス Enamel Matrix Derivative EMD ノ エイキョウ

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抄録

エナメルマトリックスデリバティブ(EMD)とIII型コラーゲンとの関係を調べるために,ラットの上顎第一臼歯口蓋側に歯周組織欠損を形成した.すなわち,歯肉および骨膜で構成された全層弁を形成し,歯槽骨,歯根膜,セメント質および歯根象牙質の一部をラウンドバーにて削除後,EMDを塗布し,実験群とした.EMDの塗布を行わないラットを対照群とした.術後1,3,5および7日にそれぞれのラットを安楽死させ,10%中性緩衝ホルマリンにて灌流固定を行い,被検歯根を含む周囲組織を一塊として採取した.その後,K-CXにて24時間脱灰した.脱灰が終了した試料は,通法に従ってパラフィン包埋した.その後,第一臼歯口蓋側中央根の長軸方向で根尖付近まで観察できる面を,厚さ5μmの連続切片を作製し,H-E染色,鍍銀染色法および抗III型コラーゲン抗体を用いた免疫組織化学的染色法により欠損部の治癒過程を観察した.<br>   その結果,フィブリン,赤血球,白血球および血小板で血餅は構成されるが,術後1日目における実験群の血餅には対照群に比較して細胞成分が少なかった.これは,EMD塗布による物理的な障壁形成による感染および圧迫による出血の両者が抑制されたことに起因すると考えられる.実験群では,術後3日目になると,歯周組織欠損部の血餅には,EMD由来と思われる好酸性物質が形成された.術後5日目の歯周組織欠損部では歯肉上皮の増生抑制,欠損部のIII型コラーゲン形成および細胞増殖が顕著に認められ,III型コラーゲンは,欠損部の創傷治癒おける毛細血管および種々の細胞が遊走するための足場となったと考えられる.これら実験群5日目の欠損部の所見は,対照群の術後7日目の所見に類似していた.<br>   以上のことより,EMDは,上皮細胞の増殖抑制およびコラーゲン形成を促進させることで,歯周組織の修復および再生を促進していることが示唆された.

収録刊行物

  • 歯科医学

    歯科医学 70 (1), 42-48, 2007

    大阪歯科学会

参考文献 (35)*注記

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