上顎洞の水様嚢胞(Hydrocele)に関する研究

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タイトル別名
  • Hydrocele in the maxillary antrum

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日常臨床において, 回転方式パノラマ写真にて上顎洞洞底部にドーム型または半球状の均一な陰影に遭遇することが時々ある.これは上顎洞粘膜に発生した貯留嚢胞で, 貯留液の性状から水様嚢胞(Hydrocele)であることが多い.本嚢胞について, 臨床的事項, 内溶液の生化学的検索, 組織学的検索などを行った.1.対象の1, 397例中89例97側に本嚢胞を認め, 発生率は6.4%であった.性差はなく, 患側は左側30例, 右側51例, 両側8例であった.好発年齢や加齢による増加傾向は認めなかった.2.64例(71.9%)が偶然に画像診断で発見された.嚢胞の大きさが30×30mm以上の症例では84%に訴えがあり, 30×30mm以下では6.25%のみ訴えがあった.訴えた症状は頬部違和感31例(32%), 頭重感8例(8.2%), 歯の違和感4例(4.1%)であった.3.本嚢胞発生に歯の疾患や鼻アレルギーが関与しているとの報告があるが, とくに関連性は認められなかった.4.鼻腔所見において, 中鼻道に副口が類円形に大きく開いている特徴的な所見を認めた.65側中48側(73.9%)に大きな副口がみられ, そのうち31側(47.7%)は副口よりファイバースコープ先端を洞内に挿入し, 洞底部の嚢胞を観察できた.5.7例の嚢胞内溶液は, 比重が平均1.037, 中性から弱酸性の黄色または淡黄色の漿液で, リバルタ反応やルネベルグ反応が陽性で, 滲出液であると判定した.細菌検査はすべて陰性であった.6.病理組織所見では上顎洞粘膜は豊富な線毛をもつ細胞が密に配列した正常な上顎粘膜で, 嚢胞壁には上皮はみられず, 浮腫様の結合組織内に高蛋白液が貯留し, 好酸球の浸潤は認めず, 細胞浸潤は形質細胞が優位で, 巨大化した形質細胞を認めた.

収録刊行物

  • 歯科医学

    歯科医学 64 (3), 209-224, 2001

    大阪歯科学会

参考文献 (28)*注記

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