口腔内環境における接着性レジンセメントおよびレジン強化型グラスアイオノマーセメントの象牙質に対する接着強さについて

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抄録

近年, 接着性コンポジットレジン修復は第3世代と呼ばれる象牙質接着システムの開発によって画期的な進歩を遂げつつある. 現在, 修復用コンポジットレジンの象牙質接着システムを応用した接着性レジンセメント(以下ARCと略す.)が開発, 市販されており, 金属修復は言うに及ばずコンポジットレジンインレーやポーセレンラミネート, ポーセレンインレーなど審美性修復物の装着には欠かせない材料となっている. また, 最近開発された合着用レジン強化型グラスアイオノマーセメント(以下RRGと略す.)は, レジン成分を添加することで機械的強度が向上し, 合着性を高めたといわれている. しかし, まだ ARCや RRGの接着性能については十分明らかにされていない. 著者らは, 象牙質前処理のタイプが異なる4種のARCおよび2種のRRGと象牙質との接着強さを口腔内環境において12%金銀パラジウム合金との突き合わせ接着法を用いて比較検討した. 同時に12%金銀パラジウム合金の表面処理効果についても検討した. 実験材料および方法 ARCとして4META-MMA/TBB系1種. リン酸エステル系1種, カルボン酸系2種の計4種を使用した. 前1者は, 象牙質前処理に酸を使用し, 水洗・乾燥を行うもので, 後3者は生活象牙質を前処理する際に水洗を行わないタイプのものである. RRGは, 従来のグラスアイオノマーセメントと同じ酸・塩基反応に加えてHEMAをマイクロカプセル化されたレドックス触媒によって硬化させるタイプ1種およびHEMA誘導体のほかにUDMAを配合しているタイプ1種の2種を使用した. ウシ下顎前歯(以下ウシ歯と略す.)は, 抜去後6時間以内に冷凍したものを使用直前に解凍して使用した. 唇面エナメル質をトリーマーにて除去したのち, #320のシリコンカーバイド耐水紙にて注水下面だしを行い被着面とした. 12%金銀パラジウム合金(以下金バラと略す.)を直径4mm, 高さ4mmの円筒状に通法どおり鋳造し, 被着面は鋳放し(as cast)の状態で試料に供した. Ag-Pd接着面処理は, 条件1: 無処理(as cast), 条件2: 平均粒径50μmのアルミナサンドブラスト処理. 条件3: トチアジンージーチオン系貴金属接着性プライマー処理. 条件4: スズ電析処理の4種とした. 接着環境は室内および32℃湿度92%の恒温恒湿室 Platinous Rainbow PR-2 (以下PRと略す.)内の2条件とした. ウシ歯象牙質接着面に業者指定の処理を行い, 業者指定の練和比でセメント練和後, ウシ歯接着面に塗布し, 4種処理を行った金バラを突き合わせ接着した. 接着操作後, PR内で24時間保存し, 圧縮勇断接着試験に供した. 結果および考察 室内接着群についてみると, ARCのうち, Superbond C&Bが最も高い接着強さを示し, そのほかのレジンセメントはあまり大きな接着強さが得られなかった. RRG2種については, 金バラの接着面処理により接着強さに顕著な差がみられた. 金バラ接着面処理については, スズ電析処理が最も効果的であった. 破断面の観察においてもスズ電析処理群のほとんどがセメントと象牙質の間の界面破壊を呈し, 金バラとセメント間の破壊が少なかった. PR内接着群についてみると, セメントにより接着強さの傾向に影響がみられたが, 概して室内接着群より接着強さが低下する傾向がみられた. これは, 象牙質接着面に付着した水分の影響が強いものと考えられる. 以上の結果より, 口腔内を想定した環境で接着試験を行うと, ARCやRRGはその接着強さの傾向に影響がみられ, 接着操作時の温度・湿度環境を考慮する必要があることが示唆された.

収録刊行物

  • 歯科医学

    歯科医学 59 (3), 24-26, 1996

    大阪歯科学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282679186417792
  • NII論文ID
    110001723880
  • DOI
    10.18905/shikaigaku.59.3_24
  • ISSN
    2189647X
    00306150
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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