SH基を有する官能性モノマーの歯質および歯科用合金への接着に関する研究

  • 小島 克則
    東京医科歯科大学医用器材研究所有機材料部門

書誌事項

タイトル別名
  • Studies on Adhesion of Functional Monomers with SH Group to Tooth Substrates and Dental Alloys

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説明

MMA-PMMA/TBBO系レジンの接着性を向上する目的で歯質や金属に接着性を示す官能性モノマーを探索してきた結果, 歯質, 金, パラジウム, 銅, 鉄及び歯科用貴金属合金などによく接着するチオフェノール性のメルカプト基を有するモノマーN-(4-Mercaptophenyl)methacrylamide(MPMA)が見出された.このMPMAモノマーは3%の塩化第二鉄または塩化第二銅を溶解した10%のクエン酸水溶液で前処理したヒトエナメル質及び象牙質表面にライナーとして塗布すると, MMA-PMMA/TBBO系レジンが強く接着することが認められた.また, これは歯質だけでなく, 金, パラジウム, 銅, 鉄などにもよく接着し, 特にパラジウムや金銀パラジウム合金に安定した耐久性のある接着性を示すことが認められた.これに対して, 重合可能な二重結合をもたないメルカプト基を有する化合物N-(4-Mercaptophenyl)isobutylamide(MPIA)を同様にパラジウム表面にライナーとして塗布した場合には接着性を示さないことから, MMA-PMMA/TBBO系レジンに対し有効な接着性を示すには共重合可能な二重結合をもつことが必要であることが明らかとなった.また, メルカプト基をもたない類似の化学構造をもつモノマーN-Phenyl methacrylamide(PMA)をライナーとして塗布した場合には耐久性のある安定した接着強さが発揮されないことも認められた.特に注目されたのは, パラジウムの表面をMPMAのアセトン溶液で処理した後, X線光電子分析装置(ESCA)で測定するとMPMAモノマーがパラジウムと化学的に結合している事実が認められたことである.このことにより, 歯科用金銀パラジウム合金に対しMPMAが結合し, 更にMMA-PMMA/TBBO系レジンと共重合して, 耐久性のある高い接着強さを示す理由が明らかになった.

収録刊行物

  • 歯科材料・器械

    歯科材料・器械 5 (1), 92-105, 1986

    一般社団法人 日本歯科理工学会

被引用文献 (14)*注記

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