ヒノキ林における皆伐および間伐が表層土壌水分状態に及ぼす影響

書誌事項

タイトル別名
  • Effect of clear-cutting and thinning on surface soil moisture conditions in a Hinoki (Chamaecyparis obtusa) stand
  • ヒノキバヤシ ニ オケル カイバツ オヨビ カンバツ ガ ヒョウソウ ドジョウ スイブン ジョウタイ ニ オヨボス エイキョウ

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抄録

森林の表層土壌の水分状態が,森林の皆伐,間伐によってどのように変化するかを明らかにするため,茨城県の筑波山の北東に位置する燕山山腹のヒノキ人工林において,皆伐した林地(皆伐区),間伐した林地(間伐区),およびそれらに隣接して残存する森林の林地(対照区)において,表層土壌の孔隙組成,および土壌水分の経時的変化を測定し,比較検討した。その結果,次のようなことが明らかになった。1)皆伐区,間伐区,および対照区において,地表面下10cm深の土壌の全孔隙率は70〜77%あり,30cm深の65〜73%より大きかった。しかしながら,地表面下10cm深と30cm深それぞれの深さごとに比べると,皆伐区,間伐区,および,対照区で顕著な違いは見られなかった。2)土壌孔隙率組成は,皆伐区,間伐区,対照区で顕著な違いは見られなかった。3)一まとまりの降雨の合計が20mmを超える降雨のあった直後には,いずれの林地の土壌も一時的に飽水状態になり,その後無降雨状態が続くと乾燥した。4)無降雨期間の土壌水分マトリック・ポテンシャルは,皆伐区で-50〜-30kPaであったが,まれに-60kPaになることもあった。間伐区および対照区で-20〜-10kPaであった。皆伐区では,他の調査区に比べて低かった。ただし,いずれの区においても植物の生育を阻害するほど,マトリック・ポテンシャルの低い状態が長期間続くことはなかった。5)土壌水分率を見ると,皆伐区では,凸地形,凹地形とも間伐区および対照区に比べて水分量が少なかった。その傾向は,特に凸地形で顕著であった。間伐区と対照区では,顕著な差は認められなかった。6)土壌温度は,皆伐区および間伐区では凸地形凹地形とも,大半が20℃以上であったが,対照区では大半が20℃未満であった。皆伐区と間伐区で,対照区に比べて高い傾向が見られた。皆伐区と間伐区では際だった差はなかったが,凸地形ではやや皆伐区の方が高い傾向が見られた。7)一降雨イベントに対応した土壌水分率の増加は,凸地形では皆伐区で大きく,間伐区および対照区で小さかった。凹地形では調査区ごとの違いは少なかったが,間伐区でやや大きい傾向が見られた。

収録刊行物

  • 森林立地

    森林立地 44 (2), 1-8, 2002

    森林立地学会

被引用文献 (3)*注記

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参考文献 (19)*注記

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