イネ科雑記XIX

書誌事項

タイトル別名
  • Notes on Some Grasses XIX
  • イネ科雑記-19-鱗被の微毛の系統分類学的意義〔英文〕
  • イネカ ザッキ 19 ウロコ ヒ ノ ビモウ ノ ケイトウ ブンルイガクテキ イギ エイブン
  • Systematic Significance of Microhairs of Lodicule Epidermis
  • 鱗被の微毛の系統分類学的意義

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抄録

イネ科の系統分類学において, 葉の表皮にみられる微毛の有無とその形態はきわめて重要な意義をもつものと考えられている. ウシノケグサ亜科ではこの微毛が存在せず, 他の亜科の種類は通常微毛をもっている. このたび葉の表皮にみられるのと同様の微毛が鱗被の表皮にも存在する場合のあることが判明した. 146属に属する288種の鱗被を観察したが, そのうち27属55種の鱗被に微毛が見出された. タケ亜科とダンチク亜科の Danthonieae 族においては, 観察種の大部分が微毛を示した. タケ亜科の種類では1つの鱗被あたりの微毛の数は一般的に非常に多いが, Danthonieae 族の種類ではその数は比較的少ない. イネ亜科, ダンチク亜科の多くの族, スズメガヤ亜科, キビ亜科においては, 大部分の種類が微毛をもたず, 少数の種類が若干の微毛をその鱗被に示した. ウシノケグサ亜科では102種が観察されたが, 微毛は全然見出されなかった. 鱗被と葉とは組織発生において類似したもので, これらの器官の表皮系が組織学的に関連していることは, 鱗被に微毛をもつ種類は例外なく葉にも微毛をもっていること, および Pappophoreae の葉に特異的にみられる特殊な微毛がその鱗被にも見出されることで裏づけられている. ウシノケグサ亜科の種類は葉にも鱗被にも微毛が完全に欠如しているものと思われる. イネ亜科, キビ亜科などでは葉には微毛があり鱗被にはそれをもたない種類が多いが, 鱗被の特殊化に伴なって微毛の出現がおさえられているものと推定される. タケ亜科の鱗被は形態や脈の状態で葉状で特殊化が少ないが, その鱗被に微毛が豊富に存在することは, その原始性をさらに裏づけるものである.

収録刊行物

  • 植物学雑誌

    植物学雑誌 80 (952), 394-403, 1967

    公益社団法人 日本植物学会

被引用文献 (1)*注記

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