バングラデシュ南西部地域における地下水ヒ素汚染と対策の実態

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タイトル別名
  • Situation of arsenic contamination in groundwater and mitigation in southwestern Bangladesh
  • バングラデシュ ナンセイブ チイキ ニ オケル チカスイ ヒソ オセン ト タイサク ノ ジッタイ

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説明

バングラデシュで最初に地下水ヒ素汚染が発見されてから20年以上が経過し,この間各国の大学や研究機関の精力的な調査・研究活動や,政府・援助機関によるヒ素汚染対策の取り組みは進展した.一方,公式認定されたヒ素中毒患者は地下水ヒ素汚染地域内に37,039人確認されており,患者の支援には多くの課題が残されている.2009年から2011年にかけてJICA個別専門家活動の一部として,ヒ素汚染の激しい村を含むバングラデシュ南西部地域(Jessore, Satkhira, Khulna, Bagerhat県)で,給水施設やヒ素中毒患者の情報収集のための現地調査を実施した.給水施設の設置状況を整理した結果,南西部地域内で政府の安全な水供給の基準(10世帯あたりに1施設)に達しているユニオンは,ほとんどないことが確認された.また,ヒ素中毒患者が多い8村の現地調査の結果から,ほとんどの村でヒ素汚染率が80%を超えていることと,ヒ素中毒患者の発生率が1.5〜5.8%という極めて深刻な現状が確認された.これらの村では,安全な水供給対策は遅れており,ヒ素検査を実施せずに利用されていた多くの井戸からヒ素が検出された.ヒ素汚染対策の遅れの原因としては,直接的には政府によるヒ素汚染問題に対する不適切な計画と実施体制があり,その背景としてヒ素中毒患者の支援や水質情報の利用方法に関する問題などがある.とくに,ヒ素汚染率を村単位で集計することにより,郡またはユニオン単位での現在の情報管理方法に比べて,より効果的な給水事業計画の検討が可能となる.今後は,科学的な給水施設建設計画,患者認定能力の向上,精度の高い水質検査と情報管理などが必要である.

収録刊行物

  • 地球科学

    地球科学 69 (4), 189-204, 2015

    地学団体研究会

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