血管内皮細胞選択的ナノDDSを基盤とするスタチン送達による低侵襲治療的血管新生療法の創製

書誌事項

タイトル別名
  • Therapeutic neovascularization by nanotechnology-mediated drug delivery system
  • ケッカン ナイヒ サイボウ センタクテキ ナノ DDS オ キバン ト スル スタチン ソウタツ ニ ヨル テイシンシュウ チリョウテキ ケッカン シンセイ リョウホウ ノ ソウセイ

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説明

これまでに,血管新生因子を用いた治療的血管新生療法に対するいくつかの臨床試験が行われてきたが,それらの効果はいずれも動物実験で認められた効果に比べて不十分なものであり,まだ決定的な治療法は確立されていない.今回,我々は生体吸収性のポリーマーからなるナノサイズの粒子(ナノ粒子)に着目し,このナノ粒子に治療因子を封入して新たなドラッグデリバリーシステム(DDS)として応用することを試みた.水中エマルジョン溶媒拡散法によって,乳酸とグリコール酸の共重合体(PLGA)からなる平均粒子径200 nmほどの生体吸収性ナノ粒子を作製し,その作製段階で,多面的血管保護作用を有することで知られるスタチン(ピタバスタチン)を混合することでスタチン封入ナノ粒子を作製した.また,生体へ投与後のナノ粒子の局在を知るために蛍光色素(FITC)封入ナノ粒子も作製した.マウスの下肢虚血モデルにおいて,虚血肢へFITC封入ナノ粒子を筋注したところ,ナノ粒子は少なくとも14日間以上筋組織内へ留まることが確認された.組織学的には,筋細胞よりも間質の血管内皮細胞へ効率よく取り込まれていた.スタチン封入ナノ粒子を虚血作製直後に1回のみ筋注したところ,7日目から有意な血流の回復を認め,組織学的にも血管内皮細胞の増加(angiogenesis)と細動脈の増加(arteriogenesis)を認めた.また,スタチン封入ナノ粒子投与後の筋組織では,Akt,eNOSの活性化(リン酸化)亢進およびVEGF,FGF-2,MCP-1といった内因性血管新生因子の産生増加を認めた.ナノDDSによるスタチンの血管内皮選択的送達は,単回投与のみで機能的血管新生が誘導されることから,虚血性疾患に対するより効果的で統合的な新たな治療的血管新生療法となりうると考えられる.<br>

収録刊行物

  • 日本薬理学雑誌

    日本薬理学雑誌 133 (3), 139-143, 2009

    公益社団法人 日本薬理学会

参考文献 (46)*注記

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