咽頭・喉頭感覚が関与する生理・薬理作用

DOI Web Site Web Site PubMed 参考文献10件 オープンアクセス
  • 高辻 華子
    新潟大学大学院 医歯学総合研究科 口腔生理学分野 新潟大学大学院 医歯学総合研究科 歯科矯正学分野
  • 高橋 功次朗
    新潟大学大学院 医歯学総合研究科 口腔生理学分野 新潟大学大学院 医歯学総合研究科 歯科矯正学分野
  • 北川 純一
    松本歯科大学 歯学部 口腔生理学講座

書誌事項

タイトル別名
  • Physiological and pharmacological actions involved in the pharyngeal and laryngeal sensation
  • イントウ ・ コウトウ カンカク ガ カンヨ スル セイリ ・ ヤクリ サヨウ

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説明

咽頭・喉頭領域の感覚神経(舌咽神経咽頭枝や上喉頭神経)は,舌領域を支配する味覚神経(鼓索神経や舌咽神経舌枝)と異なる生理学的特徴をもっている.咽頭・喉頭領域の感覚神経は舌領域の味覚神経に比べ,味刺激(4基本味)に対して神経応答性は低いが,水やアルコール刺激に高い興奮性を示す.また,長鎖脂肪酸やうま味も咽頭・喉頭領域の感覚神経を興奮させる.このような舌の味覚神経とは異なる咽頭・喉頭領域の感覚応答特性が,食べ物や飲み物の「おいしさ」に重要な要素である「のどごし」や「こく」の感覚形成に関与している可能性が考えられる.様々な機能を有するtransient receptor potential(TRP)チャネルファミリーに注目すると,カプサイシンによって活性化するTRPV1が属するTRPVファミリーは,機械刺激,熱刺激,pHの変化,浸透圧の変化で活性化する.また,細胞の代謝,分化,増殖などに関係しているTRPMファミリーには,冷刺激やメントール刺激で活性化するチャネルがある.したがって,咽頭・喉頭領域に発現しているTRPチャネルが,飲食物を飲み込むときの味,温度,触,圧などの刺激を受容し,「のどごし」や「こく」の感覚形成に寄与していると考えられる.近年,嚥下中枢において,CB1受容体が興奮性シナプス群より抑制性シナプス群に多数存在することが明らかにされた.これらシナプス前終末のCB1受容体に内因性カンナビノイド(2-AG)が結合すると,神経伝達物質の放出が抑圧される.その結果,興奮性シナプスの作用が優位になり,嚥下誘発が促進する可能性が示唆された.このように咽頭・喉頭領域からの求心性情報は「おいしさ」の感覚に貢献し,さらに,生命活動に重要な摂食機能である嚥下反射の誘発にも深く関与している.

収録刊行物

  • 日本薬理学雑誌

    日本薬理学雑誌 145 (6), 278-282, 2015

    公益社団法人 日本薬理学会

参考文献 (10)*注記

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