TRPM2チャネルによる活性酸素シグナル増幅と慢性炎症の関連

  • 山本 伸一郎
    京都大学大学院 工学研究科 合成・生物化学専攻 分子生物化学分野 京都大学大学院 薬学研究科 生体分子認識学分野
  • 清水 俊一
    昭和大学 薬学部 病態生理学教室
  • 森 泰生
    京都大学大学院 工学研究科 合成・生物化学専攻 分子生物化学分野

書誌事項

タイトル別名
  • Involvement of TRPM2 channel in amplification of reactive oxygen species-induced signaling and chronic inflammation
  • TRPM2 チャネル ニ ヨル カッセイ サンソ シグナル ゾウフク ト マンセイ エンショウ ノ カンレン

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抄録

Transient receptor potential channel(TRPチャネル)のmelastatin(M)ファミリーに属するTRPM2はカルシウムイオン(Ca2+)透過性のカチオンチャネルであり,単球/マクロファージや好中球など免疫系細胞において最も豊富に発現が認められている.また,TRPM2は過酸化水素などによる酸化的ストレスによって活性化される特徴を有しているが,詳細な機構には不明な点が多い.筆者らは,当初培養細胞を用いた実験で過酸化水素刺激によるTRPM2を介したCa2+流入が細胞死を引き起こすことを初めて明らかにした.しかし,TRPM2に対する特異的な阻害薬やknock out(KO)マウスがこれまで存在しなかったことから,生体内においてTRPM2がどのような生理的役割を担っているかについては明らかにされていなかった.最近,筆者らは単球/マクロファージにおいて過酸化水素刺激によるケモカイン産生誘導にTRPM2を介したCa2+流入が重要な役割を果たしていることを明らかにした.さらに,in vivoにおけるTRPM2の生理的役割を明らかにするためにTRPM2 KOマウスを作製し,炎症性疾患の発症や進展におけるTRPM2の役割を検証した.その結果,デキストラン硫酸ナトリウムを用いた炎症モデルマウスにおいて,TRPM2依存的な単球/マクロファージからのケモカイン産生が炎症部位への好中球の浸潤を惹起し,炎症の増悪を引き起こしていることを明らかにした.本稿では,我々が明らかにした単球/マクロファージにおけるケモカイン産生誘導および炎症におけるTRPM2の関与の詳細を述べ,炎症性疾患における新規創薬ターゲット分子としての可能性を有するTRPM2の重要性について議論し,筆者らが得ている新しい知見を加えて詳細が不明である酸化的ストレスによるTRPM2の活性化について再考する.<br>

収録刊行物

  • 日本薬理学雑誌

    日本薬理学雑誌 134 (3), 122-126, 2009

    公益社団法人 日本薬理学会

被引用文献 (1)*注記

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参考文献 (27)*注記

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