『生後・成体の神経幹細胞の移動制御』 生後・成体の神経幹細胞の移動制御と病理学的課題 ―アクチン結合分子Girdin の機能解析からの理解―
書誌事項
- タイトル別名
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- Mechanisms for the differentiation of postnatal and adult neural stem cells: new insights and pathological issues based on the analysis of Girdin
- セイゴ ・ セイタイ ノ シンケイ カンサイボウ ノ イドウ セイギョ : セイゴ ・ セイタイ ノ シンケイ カンサイボウ ノ イドウ セイギョ ト ビョウリガクテキ カダイ : アクチン ケツゴウ ブンシ Girdin ノ キノウ カイセキ カラ ノ リカイ
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抄録
中枢神経系の中でも主に生後に発生が完成する海馬の歯状回は,成体においても神経幹細胞および前駆細胞が存在し,新しい神経細胞の産生が続いている場所として知られている.本現象は「成体脳における神経新生(adult neurogenesis)」と呼ばれており,近年は齧歯類のみならずヒトにおいても存在が証明されつつある.ここで新生した神経細胞の意義については議論もあるが,近年は空間認知・学習・記憶といった海馬の基本的な機能,情報獲得や長期的な記憶において重要な機能を果たすと考えられており,再生医学の観点から多くの神経科学者により注目されている.私達はセリン/スレオニンキナーゼAkt の基質として同定したアクチン細胞骨格の結合分子Girdin のノックアウトマウスを作成したところ,海馬歯状回の生後発生が障害されていることが明らかとなり,また他グループから同部位のadult neurogenesis においても重要であることが示された.Adult neurogenesis が観察されるもう一つの主要な部位として脳室周囲の脳室下帯があるが,ここでも新生した神経芽細胞の移動におけるGirdin の重要性が示されている.興味深いことにGirdin は統合失調症の脆弱性因子として知られるdisrupted-in-schizophrenia 1(DISC1)と複合体を形成して機能することが示され,Girdin が精神疾患や神経疾患の病態と関わることも示唆された.本稿では本研究の経過・詳細を述べるとともに,病理学的な観点から今後の研究の問題点・展望について考察したい.
収録刊行物
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- 日本薬理学雑誌
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日本薬理学雑誌 143 (6), 289-294, 2014
公益社団法人 日本薬理学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282679251901440
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- NII論文ID
- 130004437193
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- NII書誌ID
- AN00198335
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- COI
- 1:STN:280:DC%2BC2cfhs1eltA%3D%3D
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- ISSN
- 13478397
- 00155691
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- NDL書誌ID
- 025568669
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- PubMed
- 24919555
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- NDL
- Crossref
- PubMed
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可