ATP受容体による中枢機能調節:ミクログリアの役割

  • 齊藤 秀俊
    九州大学 大学院 薬学研究院 医療薬科学専攻 薬理学分野
  • 津田 誠
    九州大学 大学院 薬学研究院 医療薬科学専攻 薬理学分野
  • 井上 和秀
    九州大学 大学院 薬学研究院 医療薬科学専攻 薬理学分野

書誌事項

タイトル別名
  • Purinergic regulation of microglia
  • ATP ジュヨウタイ ニ ヨル チュウスウ キノウ チョウセツ ミクログリア ノ ヤクワリ

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抄録

脳の高次機能は神経活動そのものに由来するが,神経細胞を取り囲む環境はグリア細胞によって維持されており,その活動もグリアによる影響を受けている.ATPをはじめとする細胞外ヌクレオチドは,近年,神経−グリア間伝達物質としての役割が証明され,ATP受容体を介したシグナル伝達は研究対象としての注目を集めている.生体内に普遍的に存在するヌクレオチドの細胞間情報伝達物質としての作用はリガンドや受容体の種類だけでなく,ヌクレオチド代謝酵素や様々なリン酸化酵素の存在を含め,時間的空間的に巧妙に制御されているようである.グリア細胞の1種であるミクログリアは中枢神経系における免疫担当細胞として多彩な機能を発揮する.これまでにミクログリアに発現するATP受容体にはP2X4,P2X7,P2Y2,P2Y6,P2Y12受容体が知られているが,各サブタイプの活性化はミクログリアに対して全く異なる細胞応答を引き起こす.脊髄神経傷害時,ミクログリアのP2X4受容体発現量は増大し,これを介した脳由来神経栄養因子(BDNF)の放出が脊髄後角神経の興奮性を変化させ痛覚の伝達に大きな変調をもたらす.P2X7受容体を介した細胞外液性因子の放出は,中枢組織の傷害時における炎症応答,また一方で神経保護作用を担い,神経細胞の生死に大きな影響を持っている.さらに,P2Y12受容体はミクログリアの細胞外ATPに対する走化性を制御しており,P2Y6受容体の活性化は細胞外異物に対する貪食作用を惹起する.このようにミクログリアに対する各ATP受容体サブタイプの作用は広範であり,細胞外ヌクレオチドによるミクログリアの細胞機能調節は中枢環境の調節に深く関与している.

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