『薬物代謝と肝障害』 薬物代謝と免疫・炎症を考慮した薬物性肝障害の理解と展望

  • 横井 毅
    名古屋大学大学院 医学系研究科 トキシコゲノミクス研究室

書誌事項

タイトル別名
  • New prospectives and understanding in drug-induced liver injury considering drug metabolism and immune- and inflammation-related factors
  • ヤクブツ タイシャ ト カン ショウガイ : ヤクブツ タイシャ ト メンエキ ・ エンショウ オ コウリョ シタ ヤクブツセイ カン ショウガイ ノ リカイ ト テンボウ

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抄録

医薬品開発における臨床試験や市販後において,予期せぬ副作用や毒性発現による試験中断や販売中止 は,患者のみならず他の領域にも大きな影響をもたらす.近年の薬物代謝や動態研究の長足の進展に伴って, ヒトにおける体内動態に起因する臨床開発の中止は,最近では1%以下と報告されている.しかし,過去20 年間,副作用や毒性発現に起因する臨床試験の中止は高頻度のままであり,改善されていないのが現状であ る.なかでも薬物性肝障害の発症による中止事例が多い.薬物代謝酵素による反応性代謝物(反応性中間体)の生成反応が注目され,実験動物とヒトとの種差やヒトにおける個人差を定量的に予測評価ができるようになることを目指して研究が行われてきた.しかし,現状では特異体質性と分類される発症頻度の極めて低い薬物性肝障害を,非臨床試験で予測することは困難であると考えられている.我々は,肝障害発症の注意喚起がなされている臨床使用薬の多くについて,薬物代謝・動態を考慮することによって,肝障害の動物モデルを作出した.この動物モデルを用いて,反応性代謝物生成における薬物代謝酵素の関与のみならず,免疫および炎症関連因子の寄与を明らかにし,発症メカニズムを包括的に理解することを目指した.さらに,これらin vivoで明らかにした発症メカニズムに基づき,in vitroでの予測試験系の開発研究を行っている.今後,発症メカニズムに基づいた薬物性肝障害のin vivo およびin vitro の非臨床予測試験系が確立され,所謂「特異体質性」という分類用語が使われなくなることが期待される.

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