新規2型糖尿病治療薬としてのGPR119アゴニスト

  • 吉田 茂
    アステラス製薬株式会社 開発薬理研究所

書誌事項

タイトル別名
  • GPR119 agonists, a novel approach for the treatment of type 2 diabetes
  • シンキ 2ガタ トウニョウビョウ チリョウヤク ト シテ ノ GPR119 アゴニスト

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抄録

2型糖尿病は糖尿病の90~95%以上を占め,遺伝素因および過食・肥満・運動不足などの環境素因を原因とする生活習慣病である.これらの因子が複雑に絡み合い,膵臓β細胞からのインスリン分泌不足と末梢組織でのインスリン作用不足の両面により,初期においては食後のインスリン分泌量の低下による食後高血糖が起こる.その後,慢性的な高血糖状態を経て,最終的には網膜症・神経症・腎症・心血管障害などの合併症を引き起こし,患者のquality of lifeを著しく損ない,死に至るケースもある.臨床においては,複数の血糖降下薬が存在し,単剤もしくは併用剤・合剤による治療が行われているが,新規に糖尿病および合併症へ移行する患者数は世界レベルで増加の一途を辿っている.従って,その抑止には,厳格な血糖コントロールに加えて,膵臓保護作用,体重抑制作用,心血管イベントに対する保護作用などのいずれかを有するもしくは併せ持つような新規メカニズムの画期的薬剤が必要であり,各製薬企業においてその開発が進められている.GPR119は,膵臓β細胞と腸内分泌細胞に高発現しているGαSタンパク質共役型のGPCRで,細胞内cAMP上昇を介し,膵臓β細胞においては,グルコース依存性のインスリン分泌促進作用,腸内分泌細胞においては,インクレチンホルモンであるglucagon-like peptide-1(GLP-1),glucose-dependent insulinotropic peptide(GIP)の分泌促進作用に関与している.これらの機能から,GPR119アゴニストは新規2型糖尿病治療薬となる可能性があり,現在,多くの製薬企業において,研究が進められている.また,化合物の構造によっては抗肥満作用を示すような化合物も見出されており,単剤で糖尿病のみならず,肥満をカバーできる創薬コンセプトの可能性を秘めている.本稿では,これまでに報告されているGPR119の機能,低分子GPR119アゴニストの薬理作用の知見に加えて,現在臨床試験が進行中の化合物に関する情報について紹介したい.

収録刊行物

  • 日本薬理学雑誌

    日本薬理学雑誌 136 (5), 259-264, 2010

    公益社団法人 日本薬理学会

参考文献 (9)*注記

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