水稲生育の光質依存性 : 第1報 幼植物の生長に及ぼす特定波長帯を除去した光の影響

書誌事項

タイトル別名
  • Spectral Dependence of Growth and Development of Rice Plant : I. Effects of the selective removal of spectral components from white light on the growth of seedlings
  • 水稲生育の光質依存性-1-幼植物の生長に及ぼす特定波長帯を除去した光の影響〔英文〕
  • スイトウ セイイク ノ コウシツ イゾンセイ 1 ヨウショクブツ ノ セイチョウ ニ オヨボス トクテイ ハチョウタイ オ ジョキョ シタ ヒカリ ノ エイキョウ エイブン

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抄録

光質に対する植物反応の研究には多くの場合単色光が用いられるが, 植物の正常な生育を保証するに足る十分な強度をもつ種々な光質の光を得るには, 単色光よりも白色光から特定の波長帯を除去した混合色光を用いる方が有利である. 本研究は, 水稲の育苗時における自然光の選択的利用に関する基礎的知見を得るため, 人工白色光から種々の波長帯を除去した光に対する生育反応を調査した. 実験はグロース・キャビネット内で行ない, 光処理条件の異なる3実験を実施した. 実験1は紫外部除去(-UV), 紫青部除去(-VB), 青緑部除去(-BG)および橙赤部除去(-OR)とし, 植物面での照射エネルギーは33,000 erg cm-2 sec-1とした. 実験2は-VB, -BG, -GY (緑黄部除去), -YO (黄橙部除去)および-ORで180,000erg cm-2 sec-1とし, 実験3は実験2とほぼ対応する波長帯を約1/2除去し200,000erg cm-2 sec-1に調整した. 3実験ともそれぞれ等エネルギーの白色光標準区(W)を設けた. 水稲農林25号を土耕栽培し, 日長15時間, 昼夜変温下で光処理を行ない, 播種後14日目または22日目に生育反応を比較した. 草丈, 葉鞘長および葉身長は, 等エネルギーの白色光と比較して-VB, -BG区で明らかに増大し, -YO, -OR区でむしろ抑制された. この傾向は照射エネルギー強度および波長帯除去程度の多少にかかわらず認められた. これに対して, 葉身幅および葉身傾斜角度は長波長帯除去によつて増大し, ことに葉身角度は-YOおよび-ORで著しく大となつた. 照射光中の青色光域(B, 400-500nm)に対する赤色光域(R, 600-700nm)のエネルギー比(R/B比)と生育反応の関係を検討した結果, 草丈, 葉長などの伸長生長はR/B比とともに2次曲線的に増大し, ことに葉鞘長でその変化の幅が大きかつたが, 葉身角度は伸長生長と反対の曲線を示した. 葉身の葉緑素含量は伸長生長を促進した-VB区で概して低かつた. また, 葉緑素含量に対する紫外線吸収物質の割合は光質によつて変化し, 紫外部除去光で増大するとともにR/B比の増加にともなつて増大した. 乾物重は, 帯域の除去がほぼ完全な-YOおよび-OR区で明らかに低かつたが, 白色光よりも乾物生産に効果の高い光質は実験によつて異なつていた. 実験1では-UVと-BG区で著しく効果が大であつたが, 実験2では-VB区, 実験3では-YO区で若干増加したに過ぎなかつた. 乾物重は葉面積が大きい区で高く, 両者の間に密接な関係がみられたが, 葉身への乾物の分配率はむしろ植物の全乾物重の増加とともに減少することが実験2で認められた. 以上から, R/B比の大きい光の照射によつて, 草丈ことに葉鞘長が長くその割に乾物重の大きい苗が容易に得られることが明らかになつた.

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