陸上生態系において球果類の優占度を決定するメカニズム

書誌事項

タイトル別名
  • Mechanism determining the conifer dominance in terrestrial ecosystems: a synthesis
  • リクジョウ セイタイケイ ニ オイテ キュウカルイ ノ ユウセンド オ ケッテイ スル メカニズム

この論文をさがす

抄録

熱帯林において裸子植物球果類の優占度を決定するメカニズムを模式図としてまとめた。球果類の優占度は貧栄養土壌で高くなる。土壌養分条件は被子植物の成長に直接的な影響を与え、また、森林の光環境に間接的な影響を与えることによって、球果類の優占度を決定していると考えられる。地球全体を見ると寒冷・乾燥気候で球果類の優占度が高まるが、この地理的パターンも土壌の貧栄養条件を介して生じている可能性がある。さらに、被子植物(広葉樹)がふつう優占する気候帯でも、特殊な地形・地質条件や遷移途中の森林ではしばしば球果類が優占するが、これも土壌養分条件で説明できる。貧栄養土壌で球果類の成長がさほど抑制されない原因はよくわかっていないが、菌根菌など共生微生物の働きにより養分の吸収効率が高い、または、吸収した養分の利用効率(吸収した養分あたりの成長速度)が高い、もしくはその両方の可能性が考えられる。球果類の多くは長命な先駆種というべき生態を示すが、一部は高い耐陰性をもつ。貧栄養への適応と暗い光環境への適応は低資源・高ストレス環境への適応という意味では同じであり、ストレス耐性という観点から球果類に見られる生態の多様性を統一的に説明できるかもしれない。今後の研究課題として、球果類と球果類様の広葉樹の収斂進化、花粉媒介や種子散布などの繁殖生態、植食者・病原微生物との関係などを挙げた。

収録刊行物

  • 日本生態学会誌

    日本生態学会誌 67 (3), 355-360, 2017

    一般社団法人 日本生態学会

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ