三ケ日人と三ケ日只木石灰岩採石場の含化石層

書誌事項

タイトル別名
  • Mikkabi Man and the Fossil-bearing Deposits from Tadaki Limestone Quarry at Mikkabi, Central Japan
  • 1. Skeletal Remains of Mikkabi Man
  • 1.三ケ日人骨

抄録

静岡県引佐郡三ケ日町只木の採石場から、筆者らによって昭和34年以来、発掘により、或いは偶然に発見された人骨は頭骨、四肢骨を合せて7片に上るが、目下のところ3体分と推定される。これは成人男性2体、成人女性1体と見做している。三ケ日人骨の比重、弗素含有量(田辺)は現代人骨に比し、甚だ大きく、本遺跡の洪積世動物と相違はない。しかも協同研究者高井によると、動物化石から、その属する年代は洪積世後期と考えられるので、人骨もまた洪積世後期の人類と見做すことができる。<br>次に人骨の形質から、三ケ日人はホモ•ナピエンスであって、わが国の繩文時代人に似た型である。つまり繩文時代人は洪積世人の形質の後継者と見なされる。しかし身体の大さは繩文時代人より更に小さいらしく、男性で150cm 前後の身長が推測される。<br>本人骨の中には、食肉獣によって〓まれたものがあったが、それらのうち右頭頂骨片は人為的に加工され、しかも加工のない右側頭骨と正しく関節した。〓痕を詳細に検討することによって、加工された時期は食肉動物によって〓まれた後に行われたものであることがわかった。これらの点を考慮すると遺体は人の生活の場に近く動物の餌食にまかされたと考えられ、その動機として喰人の疑がもたれる。<br>加工の跡を細く検査するとき、加工のために使用された利器は、いわゆる無土器文化の剥片石器の可能性が最も強いように思われる。<br>終りに、私どもは今回の調査に当って、終始地元三ケ日町にお世話になったが、とくに積極的に援助された三ケ日町長堀口真隆氏、同助役石原茂登男氏(現町長)、町議会議長高橋在止氏、教育委員長二橋泰蔵氏、教育長中村秀吉氏をはじめとする町職員各位、また今回の発掘に絶大な援助を与えられた県立三ケ日高校長内藤睦美氏をはじめ教職員、生徒諸氏に対して厚く御礼を申します。なお今回の調査の発端を開き、その後も地元にあって、常に私どもの調査の原動力ともなった同校高橋佑吉氏に対し、深い感謝と敬意を表するとともに、現場にあって今日なお直接に協力されている事業主藤原三郎氏に対し心からの謝意を表します。

収録刊行物

  • 人類學雜誌

    人類學雜誌 70 (1), 1-20, 1962

    一般社団法人 日本人類学会

被引用文献 (1)*注記

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