足利機業圏の地域形成

書誌事項

タイトル別名
  • Emergence of Ashikaga Textile Manufacturing Area

抄録

機業圏とは, 核心をなす都市の名を冠した織物を生産する地域をいう。 本文はその意味での足利機業圏の復元と, 地域形成を追及したもので, 次のごとく要約される。<br>1. 足利地方では古くから農家が機業を行なっていたが, 織物を集散する中心市がなかった関係から, 江戸前期には桐生機業に隷属して発達した。<br>2. 機業圏が形成され始めたのは文化年代頃と考えられ, 文久以後には桐生市場の束縛を脱して, 足利市場を核に発達していった。 しかし, 桐生に近い小俣・葉鹿方面は, 桐生機業圏との結び付きが強かった。 また, 当時からすでに, 足利本町の以西や以北に機業が盛んで, 以東や以南はさほどでなかった。<br>3. 元機と賃機, 撚糸・染色・綾取など, 分業化は江戸後期に行なわれたが, 桐生にあった半独立機屋は足利には存在しなかった。<br>4. 幕末には, 足利本町には問屋制手工業の外に, マニュファクチュア形態が生じていたが, 農村では元機屋に結びついた賃機が普遍的であった。<br>5. 明治初期の機業圏は現在より広く, その一部は佐野機業圏に成長していった。 明治後期から力織機が多くなり, 工場制工業の形態が増加し, 足利町から以西に特に工場がふえていった。<br>6. 第二次大戦には大打撃を受けたが, 戦後復興した。 現在の機業圏は, 西は桐生機業圏との間に広い交錯地帯を有するが, 南や東方向は他の機業圏との混乱は少ない。<br>7. 工場は足利市街地の西部・東部と, 南や西の一部地域に多く, これをとり巻いて零細企業が西方に広く, さらにその外側には農村賃機が東方に広く分布する。 また, 西部の小俣・葉鹿方面は各種の機業形態が入りまじっている。 機業形態の分布には, 桐生機業圏から発達した, 足利機業圏の歴史が反映している。<br>8. ふろしき機屋, 製造業と加工業を兼営する零細企業の存在, 染色業・撚糸業の過剰などは, この機業圏の特色である。<br>9. 機業の近代化はあまり著しくないが, 機業圏内は一応安定状態が続いている。 問題は後継者の獲得にある。<br>10. 機業圏の地域構造は, 地域形成の歴史が強く影響している。

収録刊行物

  • 新地理

    新地理 13 (1), 40-54, 1965

    日本地理教育学会

被引用文献 (1)*注記

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282679314791680
  • NII論文ID
    130003703429
  • DOI
    10.5996/newgeo.13.40
  • ISSN
    18847072
    05598362
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • Crossref
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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