非平衡系相互結合型ネットワークにおける記憶情報の一時的忘却メカニズムと重複パターンの分離

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タイトル別名
  • The Temporary Degradation of Stored Information in Nonequilibrium Cross-coupled Network and Its Application to Separation of Overlapped Patterns
  • ヒヘイコウケイ ソウゴ ケツゴウガタ ネットワーク ニ オケル キオク ジョウホウ ノ イチジテキ ボウキャク メカニズム ト チョウフク パターン ノ ブンリ

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抄録

<p>Hopfieldネットワークに代表されるような平衡系の相互結合型ニューラルネットワーク(以後平衡系相互型ネットワークと呼ぶ)は, 情報の蓄積機能や, 誤り訂正機能を有している.つまり, このネットワークに多少誤った情報が与えられても, ネットワークは正しい情報を想起できる.そのため, 相互結合型ネットワークは, 連想メモリとして広く利用されてる.一方, 人間は, なんらかの情報が与えられると, それに関連する複数の情報を動的に連想することができる.しかし, このような高度な連想想起は, 平衡系の相互結合型ネットワークでは実現できない.平衡系の相互結合型ネットワークのエネルギーは, 状態の更新と共に常に減少する.また, このネットワークが蓄えている情報(記銘情報)は, ネットワークエネルギーが極小値となる状態に対応している.そのため, この平衡系相互結合型ネットワークは, ひとつの入力情報に対して, ひとつの情報しか想起できない.つまり, 平衡系の相互結合型ネットワークは, 一つの入力情報に対して第2, 第3の想起候補を挙げるような動的な想起を行なえない.人間が行なうような動的な連想を実現するために, ノイズやカオス信号を用いてネットワーク状態を活性化する手法が考案されている.合原らは, 南雲らのニューロンモデルを改良し, カオス的な挙動を示すカオスニューロンを提案した.さらには, カオスニューロンを相互に結合して構成されるカオスネットワークを提案した.カオスネットワークでは, カオスニューロンからの出力が, ネットワークを活性化させる.そのため, カオスネットワークは, 平衡系の相互結合型ネットワークでは実現できなかった動的な連想を行なう.従来のカオスネットワークでは, それが記銘している情報よりも記銘されていない情報の方が多く想起される.また, 入力された情報が何であるかにかかわらず, 全ての記銘情報を想起してしまう.これらの問題を解決するために, 本研究では, 以下の二つの機能を有する非平衡系相互結合型ネットワークを提案した.(1)記憶情報の高頻度想起, (2)記憶情報の一時的忘却. 前者の機能は, ネットワークを構成するユニット中の写像関数をデザインすることで実現される.写像関数をデザインするために, 本稿では, まず, 研究対象の基盤となる平衡系相互結合型ネットワークの解析を行なった.その結果, 相互結合型のネットワークでは, そのネットワーク状態が記銘パターンに近付くにつれて各ニューロンの入力値(内部値)が1または-1に近付くことがわかった.さらには, ネットワークネットワークに記銘するパターンの数が増加すると, 内部値のバラツキモ増加する事がわかった.これらの特長を利用して, 記憶情報の想起頻度が高くなるような規則を相互結合型ネットワークに導入する.ネットワークに埋め込む規則としては, "ネットワーク状態がどの記銘パターンとも類似しない場合, ネットワーク状態はいずれかの記銘パターンに近接していく"と"ネットワーク状態が記銘したパターンに類似する場合, ネットワーク状態を活性化する"が採用される.導入の結果, 記銘したパターンを頻度よく想起する非平衡系相互結合型ネットワークが構成される. また, 後者の機能は, ネットワークの結合加重を一時的に減衰させることで実現される. 記憶情報の一時的忘却の機構を, 前述の非平衡系相互結合型ネットワークに導入すると, そのネットワーク状態は入力情報に類似した情報のみを頻繁に想起するようになる. つまり, 人間に類似した情報の想起が実現される.本稿では, 上記(1), (2)の機能を持つ提案のネットワークを重複パターンの分離に応用する.</p>

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