セントラル・カラハリ・サンにおける社会変容

  • 高田 明
    京都大学大学院人間・環境学研究科 日本学術振興会

書誌事項

タイトル別名
  • Social Changes Among the Central Kalahari San
  • セントラル・カラハリ・サンにおける社会変容--人口動態,生業活動,乳幼児の体重の分析から
  • セントラル カラハリ サン ニ オケル シャカイ ヘンヨウ ジンコウ ドウタイ セイギョウ カツドウ ニュウヨウジ ノ タイジュウ ノ ブンセキ カラ
  • The Analysis of Population Dynamics, Subsistence Activities, and Child Weight
  • 人口動態, 生業活動, 乳幼児の体重の分析から

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抄録

セントラル・カラハリ・サンとよばれる2つの民族, グイとガナにおいて, 近年の社会変容を人口構造, 生業活動, 乳幼児の体重という3つの側面から記述・分析した。1997年の再定住化政策の実施後, グイやガナの人口密度は急増し, 狩猟採集から供給される食料の質や量は低下した。また生後12カ月児の体重が移住前より低下する傾向があった。これらと関連して多くめ不満が語られている。その一方で, 再定住化政策への対応を反映して, 周辺民族であるカラハリと密接な関係をもつガナでは家畜飼養, 農耕, 賃金労働が盛んになり, 財産を蓄積しつつあるものが多くなっている。こうした経済格差の拡大は, 親族関係に基づく居住集団による住み分けや伝統的生活域へのアクセスが困難になったことに由来すると分析できる。こうしたことから再定住化政策は, 政府の大勢を支配するツワナ社会との関係やグイとガナの間の差異を際立たせることで民族アイデンティティを顕著に意識させる方向に機能してきていると考えられる。これらはサンの社会化に関する議論でも, 育児の多様性とその規定因を明確にしていくこと, 国家や他民族との関係を理論的な射程に含めることの必要性を示唆している。

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