口腔癌の化学放射線療法中に生じた抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)の1例

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  • Syndrome of inappropriate antidiuretic hormone hypersecretion occuring during chemo-radiotherapy in a patient with oral cancer: A case report

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抄録

抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)は抗利尿ホルモンの分泌異常により低ナトリウム血症に至る症候群で,悪性疾患を含む様々な状態と関連していることで知られている。一方で,癌患者の治療経過中に低ナトリウム血症が出現することがあり,まれではあるが抗腫瘍薬投与が原因でSIADHが発症することがある。SIADHは口腔顎顔面領域では一般的ではなく報告例は少ない。今回われわれは,口腔癌に対する化学放射線療法施行中にSIADHを発症した1例を報告する。<br>55歳の上顎悪性腫瘍の女性に化学放射線療法を施行した。われわれはS-1:100mg/m2/day,第1-21病日,CDDP:81mg/m2,第11病日による全身化学療法と,総線量68Gy/34fを根治的に外照射による放射線療法を行った。第17病日に意識障害(Japan Coma Scale I-1)が出現し,血漿ナトリウム値は98mEq/Lと著明に低下していた。明らかな脱水所見はなく,血漿浸透圧低下を伴った低Na血症と尿浸透圧の上昇,尿中ナトリウム排泄の持続を認め,原因となる基礎疾患を認めないことから抗腫瘍薬に起因するSIADHであると診断した。われわれは患者にナトリウムの補充と水分制限を行った。その後,患者は意識を回復し適切な血漿ナトリウム値に改善した。CDDPを含む化学療法ならびに化学放射線療法を行う際にはSIADHの発症も念頭に置き,頻回な検査を行い,低Na血症を来した場合には早期の適切な対応が重要であると考えられた。

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