孤立性内臓動脈解離9症例の検討

DOI 参考文献11件 オープンアクセス
  • 水 大介
    神戸市立医療センター中央市民病院救命救急センター
  • 林 卓郎
    神戸市立医療センター中央市民病院救命救急センター
  • 伊原 崇晃
    神戸市立医療センター中央市民病院救命救急センター
  • 松岡 由典
    神戸市立医療センター中央市民病院救命救急センター
  • 神谷 侑画
    神戸市立医療センター中央市民病院救命救急センター
  • 渥美 生弘
    神戸市立医療センター中央市民病院救命救急センター
  • 有吉 孝一
    神戸市立医療センター中央市民病院救命救急センター

書誌事項

タイトル別名
  • Nine cases of isolated dissection of visceral artery

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説明

背景:緊急疾患を疑う症状として突然の激しい腹痛や背部痛がある。大動脈解離を伴わない孤立性の内臓動脈解離は稀ではあるが,急性の腹痛や背部痛を来す疾患として常に考慮しておく必要がある。対象と方法:2010年1月から2012年3月までの26か月間。救急外来で孤立性内臓動脈解離と診断された患者9例を対象に症状や画像検査所見などをカルテから後方視的に検討した。結果:男女比は4:5であり,平均年齢は61.1±12.7歳であった。孤立性上腸間膜動脈解離が6例,孤立性腹腔動脈解離が2例,孤立性左胃動脈解離が1例であった。危険因子として知られる高血圧および喫煙を認めたのは各々4例(44%)であった。全例が突然発症の心窩部痛,背部痛およびその両者を主訴とした。8例が造影CT(computed tomography)で診断され,1例が血管造影で診断された。4例は救急専門医の画像読影では診断が困難であり,放射線科医による指摘で診断にいたった。来院時D-dimerは中央値0.4µg/mL(0.2-1.57µg/mL)であり,2例(22%)で高値を認めた。治療は7例が入院管理を行ったが,腸管虚血を認めた例はなく,全例で降圧および鎮痛管理を行い良好な結果を得た。結語:高血圧などのリスクを伴い,突然発症の腹痛や背部痛を認めた際には,本疾患を考慮する必要がある。診断にはCTが有用であるが,実際には診断に難渋することもある。大動脈解離では上昇することが多いとされるD-dimerも,本疾患では診断の補助にはならない。治療は腸管虚血を認めなければ外科的治療は不要であり,鎮痛および降圧加療で良好な結果を得ることが可能と考えられる。

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参考文献 (11)*注記

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