鈍的脾血管損傷に対するmultidetector‐row CTの検出能力

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  • The accuracy of multidetector-row CT in detecting blunt splenic vascular injuries

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抄録

血行動態の安定した鈍的脾損傷症例に対する非手術治療は一般的となっているが,非手術治療が奏功するか否かは脾実質の血管損傷が合併するか否かにより左右されるといわれている。一方,multidetector-row computed tomography(以下MDCTと略す)は鈍的脾損傷に伴う血管損傷の評価に有用との報告が散見されるが,本邦での報告は少ない。今回,鈍的脾損傷症例におけるMDCTの有用性を検討するため,MDCTで血管損傷と診断された症例の所見を血管造影と比較検討した。2007年 1 月から11月の間に非手術治療を行った鈍的脾損傷症例を対象として,血管造影で確認された血管損傷がMDCTで正確に診断されていたかどうかretrospectiveに検討した。なお,血管造影は原則としてMDCTで血管損傷と診断された症例に行われ,MDCTで血管損傷が診断されなかった症例は保存的に観察が行われた。血管損傷は造影剤の血管外漏出像,仮性動脈瘤,動静脈瘻,脾動脈主要分枝の血行途絶像とした。対象は 9 例で,MDCT所見では 7 例に10損傷(血管外漏出像 3 例,仮性動脈瘤 6 例,血行途絶像 1 例)が認められた。そのうちの 5 例及びMDCTで血管損傷を認めなかったが損傷形態が高度であった 1 例に血管造影が行われ, 6 例中 5 例に動脈塞栓術が施行された。これらの動脈塞栓術が行われた血管損傷はすべて血管造影前のMDCT所見で描出されていた。とくに動脈相のデータを用いた再構成画像は直径 5 mm以下の微小な仮性動脈瘤も描出可能で,仮性動脈瘤が第 4 病日に遅発した症例では初診時の脾動脈攣縮像を捉えることも可能であった。以上の結果より,MDCTは鈍的脾損傷に伴う血管損傷を正確に評価することが可能であった。とくに自験例では動脈相のデータを用いた再構成画像が有用であった。

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