急性呼吸不全に続発した活動的サイトメガロウイルス感染,サイトメガロウイルス肺炎の検討

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  • Active cytomegalovirus infection and cytomegalovirus pneumonia in patients with acute respiratory failure in a general ICU

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抄録

【背景・目的】サイトメガロウイルス(cytomegalovirus: CMV)は,免疫抑制下で生じる致死的感染症のみならず,免疫応答下の患者に対しても敗血症や重症外傷などを契機に活動的CMV感染やCMV肺炎を惹起することが近年報告されている。しかしながら本邦では,これら集中治療領域での活動的CMV感染やCMV肺炎に関する報告は少ない。急性呼吸不全に続発する活動的CMV感染およびCMV肺炎の臨床的特徴を検討したので報告する。【対象】ICU入室時ないしその治療経過中に急性呼吸不全を呈した35症例を対象とした後ろ向き研究である。CMV肺炎の診断は,1)肺炎の臨床症状,2)CMV pp65抗原血症(活動的CMV感染),3)気管支肺胞洗浄液(bronchoalveolar lavage fluid: BALF)ないし気管内吸引痰(transtracheal aspiration: TTA)を検体としたPCR法によるCMV DNAの検出の各項目を満たした場合とした。【方法】35症例をCMV肺炎合併の有無により2群に分け,年齢,性別,背景疾患,ステロイド投与の有無,lung injury score,sepsis-related organ failure assessment score(SOFAスコア),BALF総細胞数・細胞分画,治療,予後に関して検討した。【結果】活動的CMV感染,CMV肺炎の合併率は各々20.0%(7/35症例),17.1%(6/35症例)であった。背景病態として,ステロイドが投与された敗血症性急性呼吸促迫症候群(septic acute respiratory distress syndrome: septic ARDS)がCMV肺炎合併の危険因子として有意であった(p=0.0073,オッズ比=90.9)。またCMV肺炎発症は,ステロイド投与後29.0(19.0-31.0)日を経過していた。BALF細胞分画は,CMV肺炎発症時にリンパ球優位を示した。治療は,全例にガンシクロビルと高力価免疫グロブリンの投与が行われ,5例でCMV肺炎の寛解を得た。【結論】急性呼吸不全に続発する活動的CMV感染・CMV肺炎は決して稀ではない。とくにseptic ARDSに対してステロイド投与を行った症例では,数週間を経てCMV肺炎を発症することがあるため,経時的なCMV抗原血症検査とBALFやTTAを用いたPCR法によるCMV DNAの検出により活動的CMV感染,CMV肺炎の有無を検討すべきである。

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